今回はe.WAKITA さんブログ『ニューノーマルの理(ことわり)』からご寄稿いただきました。
安全神話崩壊の中で(ニューノーマルの理(ことわり))
在韓米国人への避難勧告が米国からなされていない、という公の事実から「米国による北朝鮮攻撃の可能性」は減退している。 口では罵り合っていても目の前の事実を観ていれば、対話路線へ傾いているように、見えなくもない。
そしてそれは北朝鮮にもいえる事であり、電磁パルス含む攻撃的軍事オプションの視点から有事が語られているが、それ以前の問題として、食糧・エネルギー事情が、北朝鮮国内にて(想像以上に)深刻化している事が、ここにきて伝わっている。 結論だけいえば米朝ともに各々固有の事情の下、あるいは相応のベネフィットなく、リスク(コスト)を負ってまで踏み込めない、先制するだけの合理的根拠がない、といった現況に陥っているようにみえる。
状況は日増しに変化、金融の世界でいうところのブラックスワンはいつ何時生じてもおかしくない現況であり、何事についても言い切る事はできないが、以下は個人的レポ。
北朝鮮
日本国内ではミサイル発射の映像が北朝鮮の脅威として度々流されているが、今目の前にある危機、の論点でいえばKN14やTD2等のレンジ・破壊力以前の問題として、北朝鮮にはミサイル発射までに時間を要する、連続的発射実験を行うといった資金的余裕がない などといった不安要素を抱えており、防御力が脆弱で太刀打ちできない北朝鮮は、米国と軍事衝突となれば奇襲攻撃しかあり得ない。そこに全てを注ぎ込み、しかもその後は神頼み、といった風にみえる。(過小評価というわけではない) それを踏まえれば非合理的な行動は考えにくい。
最近起こった関東圏の連続停電や米国の大規模停電は、それら北朝鮮による工作とかそうでないとか議論になっているが、実際の軍事衝突の場合には米国はそれら(電磁パルス、いわゆるEMP攻撃含む)サイバー空間ですらコントロールできる可能性残し、「自暴自棄にならない限りにおいては」北朝鮮からの先制攻撃の可能性は米国同様、徐々にだが低下しているようにみえる。
米国
一般的には今回の問題が軍事的側面から語られるのは当然な事ではあるものの、以前お伝えしたように、トランプとしては政権が誕生した当初の柱である雇用創出、そのための大減税、といった基調的内政につながっている点は見逃せない。大減税の話が吹き返してきたがシリア攻撃でそれまでの批判(逆風)を覆し、北朝鮮問題でさらに機運に乗るといった計算は確実に介在している。トランプがここにきて、「いもを引いているんじゃないか」(カールビンソン航路の件)なんて事をいわれるが、それは軍事的視点の一側面に過ぎない。
北朝鮮の過剰な挑発に乗らず、前掛かりな攻撃をしない、といった「我慢のオプション」は連邦議会における長期的成功につながっており、何より彼の「アメリカ第一主義」を支持した基盤はそれを望んでいる。彼を支持した投票層は雇用創出と賃金拡大を望んでおり「トランプの我慢」は何よりそれを優先しているように窺えるし、そういう意味で軍事的圧力から経済的圧力に軸足の比重を変えているようにもみえる。もっといえば現在の忍耐は、直近の米国の長期金利上昇につながっている。(外交と内政を無理に繋げているわけではない、率直な感想)
経済オプションへの帰結
近年では07-08年に表面化したサブプライムローン問題、11年には日本国内で東日本大震災といった、いわゆる冒頭のタレブ理論、ブラックスワンが生じた。
日本国内では一般的にも安全神話の崩壊に目を向ける現実的な論調がようやく展開されている。現実に目を向ければ中国軍やロシア軍は北朝鮮との国境付近に移動増員され、第2次世界大戦前夜、つまりWW3のシナリオすら連想させている。米大統領が「全ての選択肢」を仄めかした時点ですべてのシナリオが存在し、「予想だにしなかった事(ブラックスワン)」が発生してもおかしくない、といった現況になっている。
がしかしそれらを考慮しても米国から中国への働きかけ、経済制裁(石炭輸入禁止や原油供給制限、北朝鮮の口座凍結)は効いており、06-07年に米国が採った措置(BDA口座凍結、マカオの北朝鮮口座凍結措置)によって北朝鮮が交渉のテーブルにしぶしぶ着いた事が回顧される。
最近では日本国内において、白昼堂々の金銭強奪事件であったりサイバー攻撃による預金強奪が生じているが、北朝鮮による米国からの金融封鎖への予防的対処なんじゃないか、といった傍から見れば馬鹿馬鹿しい話も知人間の中では執心したりする。貴金属の現物(取引)やサイバー攻撃による強奪事件において彼らの噂話はどうしても出てくるし、直近では連邦準備(FRB、NY連銀)にあるバングラデシュ中銀口座から不正送金されたことに北朝鮮が関わっている、といった事が話題になった。
中国に銀行口座がなくとも北朝鮮は皆が思っている以上に国交があり、ロシアはじめとする逃げ道は複数存在するように映るが、原油禁輸はじめとする経済制裁は対コストの面で軍事的圧力に勝るように映る。 ここにきての中韓ロ反対から米国が手を出さないことにタカをくくった北朝鮮による挑発行為がこれ以上エスカレートしない、といった事を前提とした話ではあるが。(タカ派で覆われたトランプ政権はプツンとキレる可能性がある、その予兆はコメントにでている)
ブラックスワンはいつでも発生しうるが、軍事的緊張は各々固有の事情から緩和しているのではないか?といった話。ニューノーマル閲覧者の方へ。
執筆: この記事はe.WAKITA さんのブログ『ニューノーマルの理(ことわり)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2017年05月08日時点のものです。
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