「カスタマイズ対応など少ロットの生産には威力を発揮するが大量生産には向かない」と言われてきた3Dプリンター。ニューヨークのブルックリンに本社を構え、3Dプリントによる部品製造などを行うブードゥー・マニュファクチャリングは、その定説を覆そうとしています。
単一部品の生産過程における“人間の手による手作業”を排除することを目的とした“プロジェクト・スカイウォーカー(Project Skywalker)”を立ち上げ、先月関連情報を同社のブログや動画で公開しました。
Voodoo Manufacturing: Project Skywalker(YouTube)
https://youtu.be/GoNRTucoErE
3Dプリンター9台、ロボットアーム、トラック、サーバーラック、専用ソフトウェア、ビルドプレート(プリント物をのせる台となる板)交換機で構成されたプロジェクト・スカイウォーカーは、全自動の小規模3Dプリンター工場と言えるものです。専用ソフトウェアからの指示により、3Dプリンターによる作業開始、プリント終了後のロボットアームによるビルドプレート回収、回収されたビルドプレートを従業員が回収できるトラック、新しいビルドプレートの設置、専用ソフトウェアによる新しい作業開始指示までの一連の工程が全て自動化されています。
1万個以下の部品製造というニッチな市場では居場所を見つけた同社ですが、1万個以上の大量生産にどう対応していくかが課題でした。大量生産に対応していくにはこれまで以上にコスト削減が必要になってきます。自社の現状分析をしたところ、従業員がビルドプレートを交換するのに労働時間の10%を費やしていました。この作業を自動化することがプロジェクト・スカイウォーカーのきっかけとなったそうです。
全自動となったことで3Dプリンターの稼働時間は、従来の従業員の労働時間でもある8時間から24時間フル稼働と3倍の生産能力となりました。同社はロボットアーム1台で100台の3Dプリンターからビルドプレート回収が可能と推測しています。この推測が正しければ、従業員1人が管理する3Dプリンターは現状の40台から400台まで飛躍的に増加するとしています。コスト削減という意味では、これまで10人の従業員が必要だった作業が1人で済むようになるということです。人件費が10分の1に圧縮されるというのは経営者や投資家にとっては無視できない数字です。
すでに産業用ロボットが世界中の工場で導入されていますが、最終的には人工知能とロボットが工場を管理するようになっていくのでしょうか。2015年に野村総合研究所が発表した資料には、人工知能やロボットによる代替可能な職業として製造業に従事する人の多くがリストアップされています。人件費削減を追い求めていくと、近未来を描いたSF映画にでてきそうな人っ子一人いない工場も現実的な話にはなってきます。
アメリカ国内の製造業復活を公約に掲げるトランプ大統領の目には、マンハッタンのトランプ・タワーから車で40分くらいのブルックリンにあるこの工場の映像がどう映るのでしょうか。
※ソース引用:
https://www.youtube.com/watch?v=GoNRTucoErE
http://blog.voodoomfg.com/tag/project-skywalker/
https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx
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