金メダルへの意気込みを新たに臨んだリオ五輪・卓球女子団体は、大接戦となった第5ゲームで不運のエッジボールによって福原愛がハン・インに敗れ、3位決定戦でシンガポールを3-1で破り銅メダルを獲得した。
エッジボールとは、打った球が相手サイドの台の角に当たって不測の変化をしてしまうことで、これはどんな名選手でも返すことは不可能と言われている。最後の1点をエッジボールで取られてしまったことは、まさに”不運”でしかなく、あと数ミリずれて台の側面に当たっていればサイドボールで、福原の得点となっていた。勝負の世界にラッキー、アンラッキーは付き物なので、そこは仕方ないのだが、私があまりにも憤りを覚えたのはその後だ。
卓球界では子供でも知っている最低限のマナー
卓球の世界で、エッジボールやネットイン(ネットをかすめて相手サイドに入ってしまうこと)は、偶然に起こる得点=卑怯な得点として、点を入れた側が手をあげたり会釈をしたりして謝罪の意を示すのが基本中の基本なマナーだ。少なくとも、ガッツポーズをとることさえ、絶対にやってはいけない “マナー違反” だと選手たちは小さい頃から教わってきているはず。世界一厳しい卓球大国・中国で特訓を受け、ドイツに帰化したハン・インがそれを知らないわけがない。
にもかかわらず、ハン・インはエッジボールで点を取ると、叫び声と共に両手を挙げて床に寝っ転がるや、自分サイドに駆け寄りコーチたちと抱き合って大はしゃぎ。しかも、試合が終わったらまず相手選手、審判と握手を交わし互いの健闘を称えるのが何よりも先だ。それすらもおざなりにして、はしゃぎ回っているハン・イン選手にも唖然としたが、選手のマナー違反をたしなめずに一緒になって喜んでいる監督やコーチサイドにも、正直言って強烈な不快感を覚えた。
ドイツは帰化選手にもう一度、スポーツマンシップ教育を
もちろん、マナーはマナーでしかないので、それによって結果が変わるわけではない。しかし、試合後の福原の唖然とした表情は、ただ負けたことへのショックではなく、あまりにも非礼な相手選手に対する憤りと呆れのようなものが私には見えた。中国サイトでは『福原愛が握手を拒否』したという、見当違いのバッシング記事まで出ている。その真偽は定かでないが、中継を見る限りハン・インは試合終了直後に握手には来ていないし、サイドボールではないかという物言いに協議している審判団に悪態をつく姿まで映されていた。
そんなことにはひと言も言及せずに、「負けの原因はすべて私にある」とインタビューに答えた福原愛はスポーツマンとして本当に立派だったと思う。勝っても負けても気持ちよく終われる、それがオリンピックだろう。他国選手を帰化させて代表にするのはいいが、スポーツマンとしてのマナー教育ぐらいは徹底してほしいものだ。自分たちだけでなく、相手チームも気持ちよく終われるということをアマチュアスポーツは大切にすべきことだろう。
画像提供:Getty Images
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(執筆者: 荏谷美幸) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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