伏見つかさ『エロマンガ先生』の最新刊を読みました。
伏見つかさ『エロマンガ先生』の神がかった完成度にいまさらながら驚く。
伏見つかさ『エロマンガ先生』の最新刊を読みました。
ベストセラーになった代表作『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』に続く新シリーズであるわけですが、前作に負けず劣らず面白いです。
始まったときは「ちょっと守りに入っているんじゃないの?」などと思っていたのですが、なかなかどうして、ここまで堅実に続けられると降参するしかない。
圧倒的な完成度に全面降伏です。
『エロマンガ先生』の主人公は高校生ライトノベル作家。
そこそこ才能があり面白いものを書いてはいるものの、あまりヒット作には恵まれていないという状況。
かれには義理の妹がひとりいるのだけれど、自室にひきこもって出てこない。
ある日、ささいな偶然から、その妹が自作に絵を付けてくれているイラストレーター「エロマンガ先生」であることがあきらかとなるのだが――と話は進みます。
人気作家やらイラストレーターがことごとく中高生であるあたり、荒唐無稽といえばそうですが、ライトノベルとしては十分に「あり」な設定でしょう。
偶然にも、というか必然なのかもしれませんが、平坂読が同時期にやはりライトノベル作家を主人公にした『妹さえいればいい』を書いています。
ぼくはどちらも好きなのですが、じっさい読み比べてみるとかなり作家性の違いを感じます。
ネタがかぶったりしているから非常にわかりやすい。
あえていうのなら、『妹さえいればいい』はわりに現実的な年齢の作家を主役に据え、徹底的にディティールに凝って見せているのに対し、『エロマンガ先生』は完全にファンタジーに走っている印象がある。
いや、もちろん『妹さえいればいい』も非現実的な話ではあるのだけれど、そこにはひとさじの「毒」が垂らしてあって、奇妙にリアルに思えてくるのです。
まあ、『エロマンガ先生』に毒がないわけでもないけれど、その毒は慎重に量が測られていて、決して一定のレベルは超えないよう調整されている、という感じを受ける。
根本的に世界がひとに優しいというか、あまりひどいことが起こらないよう守られている世界なのだと思うのです。
いや、物語の始まる前には交通事故で主人公の義母が亡くなっているので、何もかも幸福な世界、というわけではない。
それなりに一定のリアリティに配慮が行われているのはたしかなのだけれど、それでも登場人物がみないい人で、深刻な裏切りがないという意味で、牧歌的な世界ということができると思います。
それを指して、甘ったるいファンタジーに過ぎないという人はいるかもしれません。
しかし、作者はこのファンタジーを成立させるためにどれほど繊細な努力をしていることか。
それはなんというか、ほとんどジャック・フィニィあたりのファンタジー小説を思い起こさせるほどなのです。
いや、ぼくもみんなが幸せで、みんなが互いに思い合っていて――というのは、やはりウソであるとは思うんですよね。
でも、
この記事の続きを読む
ポイントで購入して読む
※ご購入後のキャンセルはできません。 支払い時期と提供時期はこちら
- ログインしてください
購入に関するご注意
- ニコニコの動作環境を満たした端末でご視聴ください。
- ニコニコチャンネル利用規約に同意の上ご購入ください。
コメント
コメントを書く(ID:19746846)
エロマンガ先生面白かったです。
この連休中に全部読んでしまいました。
海燕さんが紹介してくれた「妹さえいればいい」も楽しく読めました。
今、海燕さんがどうしても読みたいという思う
ライトノベルを教えていただくことはできますでしょうか。
(著者)
どうしても読みたいというか、じっさい出たらすぐに読む作品でいうと、この『エロマンガ先生』と『妹さえいればいい。』に加えて、『ソードアート・オンライン』、『ログ・ホライズン』、『勇者様のお師匠様』、あとは『やはり俺の青春ラブコメは間違えている』が入って来るかどうか、というあたりでしょうか。
少ないなー。お世辞にもラノベ読みとはいえないですね。その上、我ながら「にわか」なラインナップだな、とちょっと苦笑。ぼくは基本的にはメジャー指向の人なんだということがよくわかります。
やっぱり売れている作品のほうを面白く感じますね。小説に関しては、破天荒な面白さより完成度で見ちゃうところがどうしてもあるし。そういう意味では、すっかり保守的になったものだなあ、とわが身をかえりみて思ったりもします。一概に悪いこととも限らないでしょうが……。
(ID:19746846)
お返事遅くなり申し訳ございません!
ありがとうございます!
1通りアニメ化したものは見ていたのですが、ラノベは読んでおりませんでした。
楽しみが増えました。ありがとうございます。
勇者様のお師匠様も読んでみます。
海燕さんの昔のブログで「らくえん」を知ってから、
海燕さんの紹介するものには絶大の信頼をおいています(笑)
いや~、面白い未読コンテンツがあるって本当に幸せですね!