先日書いた通り、Phaさんの新刊『持たない幸福論』を読み上げたので、その感想を書いておきたいと思います。
結論から書くなら、非常に面白かったです。
ぼくとしてはビシバシ心に突き刺さる知的にエンターテインメントな一冊でした。
書き手が「日本一有名なニート」としてしられるPhaさんということで、ともすると「ニートのススメ」みたいに読まれかねない本であるとは思いますが、ぼくにいわせればそういう内容ではない。
これは仕事や家族に関する集団幻想を片端から打ち破ろうとするラディカルな告発の書だと思うのです。
この本のなかで、Phaさんは「労働」や「家族」、「お金」といった価値の絶対性に対して次々に疑問を呈していきます。
その人でなければできない仕事などというものはないとか、家族もシェアハウスグループの一種に過ぎないとか、お金がなくても楽しく生きていくことはできるとか。
同い年でやはり無職ライフを堪能している者としては共感せずにはいられない意見ばかりなのですが、それらの幻想をかたくなに信じている人にとっては反感を感じずにはいられない内容でしょう。
これらの意見を通して、Phaさんは読む人をいわゆる「世間の常識」なるものから解き放とうとしているように思えます。
その意味でこの本は過激な告発の書であり、そして偉大な解放の書でもあるのです。
なんだかんだいって世の中にはまだ「働かざるもの食うべからず」とか「結婚して子供を作って一人前」といった宗教を信じ込んでいる人も多いことも事実。
そして、それで満足している人はいいけれど、苦しんでいる人も多いはずなのですね。
この本はそういう人たちに向かって優しく「苦しまなくてもいいんだよ」と語りかけます。
働きたくないのに働かなくてもいい、結婚しなくても、家族を持たなくても、後ろめたく思う必要はない。本書の内容を簡単に表すなら、そういうことになるでしょう。
決してニートになることを奨めているわけではありません。
そうではなく、「世間の常識」という形のない鎖から自分を解き放って生きてみませんか、と誘いかけているだけだと思います。
あらゆる常識や幻想を排して判断してみて、その上で「やっぱり自分は働いてお金を稼ぎたい」と思うならその道を歩めばいい。
そしてもしそうではなく「働くことってしんどいな」と思うようならなるべく働かないで済む生き方を選べばいい。
いずれにしろ優劣はない、そういう思想だといっていいでしょう。
つまり、「なんでもあり」ですね。
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