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『アルスラーン戦記』開幕! 原作既読者の視点からその魅力を考える。

2015/04/05 18:29 投稿

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アルスラーン戦記(1) (講談社コミックス)

 季節は早春、新しいアニメが始まる頃合い――というわけで、新番組『アルスラーン戦記』第1話を観ました。

 大陸を東西に貫く〈大陸公路〉の覇者・パルス国の王子アルスラーンの長い長い物語がここに始まるわけですが、実はこの第1話はまだ「序章」。

 本格的に物語が動いてくるのは次の第2話からになると思われます。

 実はこの第1話にあたるエピソードは原作小説には存在しません。

 小説は、この3年後の〈アトロパテネの会戦〉から始まります。

 それでは、アニメが独自にこの「序章」を挟んだのかというと、そういうわけではなく、この第1話は荒川弘による漫画版のオリジナルなのです。

 つまり、序盤からすでにオリジナル・エピソードを入れ込んできたわけなのですが、この判断は英断だったと思う。

 いきなり一大敗戦から始めてしまう小説の冒頭も素晴らしいのですが、この漫画/アニメの「序章」はよりていねいな印象を与えます。

 しかも原作既読者にとっては「なるほど! こう来たか」と唸らされる展開でもある。

 雑誌で漫画版の第1話を見たときは「さすが荒川弘」と思わされました。

 この第1話に登場する「ルシタニアの少年」の正体は、実は――まあ、原作既読でわかるひとはこの時点でもうわかることでしょう。

 ちなみに漫画/アニメでは、原作とくらべてもアルスラーンの繊弱さ、凡庸さがいっそう強調されています。

 これはより低年齢層向けの少年漫画としてわかりやすいエンターテインメントに仕上げるためだったのでしょう。

 ほんの少しの違いなのですが、その「ほんの少し」が決定的な効果を生んでいる。

 いまの時点ではアルスラーンはその地位以外にはまだ何も持っていない平凡な少年に過ぎない。

 そして、この頼りない少年が万人が仰ぎ見るパルス中興の祖・解放王アルスラーンにまで成長していくのです。

 そのスケールの大きさはやはりあたりまえのファンタジーとはひと味違っていますね。

 荒川弘による脚色も凄かったし、アニメそのものの出来も相当のものですが、やはり何より原作小説の出来そのものがあまりにも素晴らしい。

 かつて『アルスラーン戦記』は一度アニメ映画化されているのですが、そのときはまだ技術的に作品世界を映像化することに無理がある印象が強かった。

 じっさい、原作の第5巻あたりまで追いかけてそのシリーズは終わっています。

 しかし、この新しいテレビ版はおそらく圧倒的人気を集めることでしょう。

 漫画版は既にベストセラーになっているようですが、アニメが人気が出れば、さらに破格の部数が出るんじゃないかな。

 『鋼の錬金術師』や『銀の匙』以上のセールスを記録することができるかもしれません。
原作の長年のファンとしては実に嬉しい事です。

 わずか数年で「賞味期限」を迎えて忘れ去られていく作品も少なくないなか、30年近くの時を経てもなお第一線のエンターテインメントとして通用する『アルスラーン戦記』の凄みはやはり尋常のものではありません。

 きっとこれが「本物」ということなのでしょう。

 流行にも、時代の流れにも左右されない「本物」の面白さ。

 特に非西洋世界、それも往古のペルシャを参考にして舞台を作り上げたオリジナリティはいまなお色褪せてはいない――というか、いまでもほとんど追随するものがいない状態です。

 『アルスラーン戦記』では今後、インドとかチベットあたりがモデルになった国家も出て来ます。

 パルスの周辺では、さまざまな野心的な国が牙を研いでいるのです。

 やがては 

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