石田衣良は何を書かせてもどこか淡白で情緒が薄い作家ですが、こういうダーク&ビターな話を書かせるとさすがにうまい。繊細な儚さと破滅的な魔性を共存させる「運命の女」に惹きつけられます。
が、いまは昏く物憂い物語世界にひたり切れるほど体力がないので、癒やしを求め平行してアニメを見ることにしました。今季の作品のなかでも非常に評価が高い『アイドルマスター シンデレラガールズ』。
録画したまましばらく放置していたんだけれど、ようやく神回と評判の最新話まで追いつきました。いや、これは素晴らしい。
『水を抱く』から世界を切り替えると、冷たい海の底から突然あたたかな海面へ浮上したようでくらくらしますが、まあそれはそれで味わい深い。
それにしてもよくできたアニメですねー。前作『アイドルマスター』もそれはそれは素晴らしい作品で、ぼくは映画監督のフランク・キャプラなんかを例にあげてその善性に満ちた世界を絶賛したものですが、『シンデレラガールズ』はまた一風変わった面白さがあります。
何といっても、物語がよくできている。シナリオレベルでの成果なのかどうかわかりませんが、非常に練られ考えられたストーリーテリングという印象。
正直、じっさいに見るまでは期待と不安が相半ばする心境だったので、第1話の練度の高さには驚かされました。いや、ほんと、ここまでレベルが高いものをテレビで無料で(衛星放送の料金は払っているけれど、それだけで)見られてしまう時代というのは恐ろしいものがありますね。
ハイクオリティなエンターテインメントが次から次へと湧いて出る魔法の壷を持っているようなもので、もうぼくの人生はウハウハとしかいいようがありません。まさにハピハピ☆
これは『艦これ』もそうなんだけれど、『デレマス』は原作がソーシャルゲームであるわけで、そもそも方法論的に困難を抱えていると思うのです。
端的にいうと、制作時点で既にキャラクターがとんでもなくたくさんいるということですね。ゲーム版の『デレマス』には現時点で200名を越えるキャラクターが存在しているそうですが、その全員を物語に絡めようと思ったら大変なことでしょう。
もちろん、べつだん、すべてのキャラクターをアニメに出したり、物語に絡めたりする必要性は必ずしもないんだけれど、でも、それぞれのキャラクターにそれなりのファンは付いているわけで、なるべく多くのキャラクターを登場させたほうがユーザーの満足度が高くなるはず。
しかし、もともと物語的な必然性からキャラクターが生み出されているわけではないということで、必然的に作劇的な問題が発生して来るのですね。
そうなってくるとどうしたって群像劇にせざるをえないんだけれど、アニメで膨大なキャラクターが絡む群像劇をやろうとするとそう簡単ではない。少なくともひと工夫が必要になってくることは間違いない。
で、『デレマス』はその作劇的な工夫がほんとうによくできていたと思うのです。第1話をわずか3人(実質2人)にフォーカスして描き抜いたところも良かったけれど、第2話と第3話で主要キャラクターの顔見世をして、あらためて第4話でキャラクター紹介をやるあたり、エクセレントとしかいいようがない。
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