「ずっと選んできたわ 選ぶって捨てる事 あたり前の安全な会社を捨てて 家を捨てて 好きだと言ってくれる人も捨てて 生きなきゃ 生きることだけを選んできたわ」『おいしい関係』より
生きることだけを選ぶ――槇村さとるのおいしい世界。
肩が凝ってくると、槇村さとるの漫画を読む。何か張りつめたものが、ほっと緩む。不必要な力が抜けて、からだが柔らかくとろけていく。
たとえば『おいしい関係』。同じ「食」をテーマにしていながら、ここには『美味しんぼ』のような闘争はない。競争も、世代間の対立もない。ただ「美味しく食べることの喜び」、「生きていくことの賛歌」だけがある。
どこどこまでもヒューマンでフェミニン。それが槇村の世界だ。それはひとによっては物足りなく感じられるかもしれないけれど、でも、そこにはひとを救う優しさがある。
もちろん、槇村作品には 自分にきびしく、他人にもきびしく、自立、独立、独歩を重んじる、そんな一面もある。しかしやはりそれだ
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