きょうから試験的に配信時刻を午後にずらしてみます。何でも試してみないとね。
さて、ペトロニウスさんにオススメされて、アナステーシア・モレノ原案による野上武志の漫画『まりんこゆみ』を読みました。ブラウザで全編を無料で読めるウェブ漫画です。
簡単に云うと、ゆみちゃんという名前の日本の女子校生がひょんなことからアメリカの海兵隊(マリーンズ)に入隊しちゃってさあ大変、というお話なのですが、なるほど、これは燃えるな……!
あらすじだけを書き出すとふざけているようにしか思えないし、じっさい、全編、ライトなコメディタッチで進んでいくんだけれど、海兵隊の描写そのものは原案者の実体験に則っていてリアルらしい。
「色々なジャンルを萌え絵で可愛く疑似体験」みたいな漫画はこの世に山ほどあるけれど、そのなかでも極北的な内容ですね。
だって、海兵隊だぜ。『フルメタル・ジャケット』だぜ。そこに日本の女の子がひょいっと入っちゃうんだぜ。ありえないでしょ?
しかし、ところがところが、このありえないような初期設定から物語はローリング・ストーンのように二転三転し、中盤をすぎる頃には過激に盛り上がっていくのです。
だまされたと思って60話くらいまで読んでみてほしい。めちゃくちゃ燃える&泣けるエピソードが待っています。主人公のゆみたちが海兵隊の地獄の訓練を乗り越え一人前の海兵隊員として任官するというお話です。
それぞれ、人種も違えば、経歴も、文化も、能力も、何もかも違っている若い女性たちが、同じ「アメリゴ合衆国海兵隊の仲間」として鍛えあげられ、認められるというシチュエーションには、「仲間っていいな!」と熱く思わせる何かがある。
いやー、でもしかし、どうなんでしょうね。たしかにこれはとほうもなく感動的な場面なんですけれど、でも、これはようするに海兵隊の「マインドファック」が完了して主人公たちが兵士として、軍隊の部品として洗脳され切ったということをも意味しているわけで、実に両義的と云うしかありません。
これはもう、海兵隊がどうこうではなく、「仲間」という概念そのものが持つ両義性です。それぞれまったく異なる境遇を持つ少女たちが、ありとあらゆるバックグラウンドの違いを超えて、「同じ仲間」として認められるというシチュエーションには、たしかに「仲間っていいな!」、「アメリゴ合衆国って懐が深い国だな!」と思わせるものが存在しています。
しかし、それは同時に「仲間の敵」に対しては限りなく残酷になれる条件が整ったということでもあるのです。
つまり、ここで描かれている海兵隊の訓練とは、日本人とか、スパニッシュとか、資産家令嬢とか、腐女子wといったバックグラウンドの属性をいったん解体して、「海兵隊の仲間」と「それ以外」に再編するという作業であるのですね。
この悪夢のような訓練を乗り越えたなら、金持ちであろうが貧乏人であろうが、チャイニーズであろうがスパニッシュであろうが関係ない! 同じ海兵隊の仲間だ!
そして、ワンス・ア・マリーン、オールウェイズ・ア・マリーン、一度海兵隊に入ったなら生涯それは変わることはないのだ! そう云い切れることは実に感動的ではあるのですが、それは「海兵隊の仲間」と「仲間以外」を峻別する思考を生み出すわけです。
これは「同じ仲間」の間の最大の友誼と結束を意味している一方で、とんでもなくやばいことでもある。でもまあ、仲間ってそういうものだよね、という気もする。非常にむずかしい問題だと思います。
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