弱いなら弱いままで。

「強さ」のインフレと、そしてデフレ。世界を「頂点」と「底辺」の双方から描く物語。

2013/12/29 03:27 投稿

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 「物語三昧」の最新記事が面白かった。


 最近、ちょっとした理由があって、毎日のようにペトロニウスさんと話をしているのですが、いやー、お疲れ様ですとしかいいようがない。具体的な事情を書くわけには行きませんが、濃い人生を送っているよなー。傍で見ている分には非常に興味深いです。

 で、「物語三昧」の記事の話。ここでペトロニウスさんは「強さのデフレ」というフレーズを使っています。

 「強さのインフレ」という言葉はよく使われますが、「デフレ」というのは新しい概念なんじゃないかな。いや、ひょっとしたらどこかで既に使っている人がいるかもしれませんけれどね。

 一般に少年漫画的な物語というものは、『ドラゴンボール』みたいに、物語が進んでいくにつれて、強く、より強くと強さの基準が変わっていきます。これが「強さのインフレ」。

 しかし、時には強さが「デフレ」を起こすこともあるんですね。つまり、それまで強かったキャラクターたちから視点が離れ、より弱いキャラクターたちに中心が移るわけです。

 ペトロニウスさんは『BASTARD!!』のサムライと魔戦将軍たちの戦いを挙げていますね。いまどきの若い読者のなかには読んでいないひとも多いのではないかと思いますが、ここらへんの『BASTARD!!』はほんっっとうに面白かった!

 それこそ『ネギま!』とかと比べても全然劣らないと思う。萩原一至の天才の絶頂を見ることができたエピソードですね。この後、色々あって天使が出て来てからお話が迷走しはじめるわけですが(涙)。

 ま、それは余談。『BASTARD!!』の場合、それまで主人公ダーク・シュナイダーやかれに仕える四天王の壮絶なバトルが描かれた後で、ワンランク力量が下のサムライや魔戦将軍の話に視点が移り、そうするといままであたりまえのものとして描かれていたダーク・シュナイダーたちの戦いがいかに凄まじいものであったか初めてわかる、という構成になっているわけです。

 これは非常に効果的な手法で、「世界の頂点」をそのままに描いても、その高さは実はよくわからない。どうしたって「世界の底辺」を描く必要があるわけです。

 こういう話になると、ぼくはやはり『ファイブスター物語』を思い浮かべます。『ファイブスター物語』はある意味、「インフレ」と「デフレ」が同時進行しているお話で、まあたしかに話は「より強く」のほうにも進んでいるのですが、同時に「より弱く」のほうにも進行しているんですね。

 そのことがいちばん良くわかるのが第四部「放浪のアトロポス」の、延々とモーターヘッドが介入しない戦争が続くエピソードです。

 単行本ではオールカットされている話ですが、「あたりまえの地上戦」に駆り出され、次々と戦の大義もわからず死んでいく兵士たちの物語は、それまでの騎士たちの華麗な物語とは対照的で、ひたすら地味です。

 しかし、その地味さがあって初めて、天才たち、英雄たちの物語が花開くんですね。百万人にひとりもいない本物のヒーロー、その凄みというものは、「底辺」の描写があってようやくわかるということ。

 もちろん、エリートである騎士たちにも実は途方もないヒエラルキーがあります。そのことがわかるのがいつだったか公表されたパワーゲージ表。

 その表の下の方に「その他の騎士」とかいうことで、物語に登場するほとんどのキャラクターがまとめられてしまっているんですね(笑)。

 デコース・ワイズメルも、アーレン・ブラフォードも、ヨーン・バインツェルも、皆、まとめてそこに入ってしまう。

 じっさいには、その強さの差は凄まじいものがあって、天才と凡人、さらにはそれ以下に分かれているんだけれど、 

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