ふと思い立って『魔法先生ネギま!』を読み返しています。あらためて読んでみると、めちゃくちゃ面白いですねえ。

 いや、おもしろいことは知っていたんだけれど、まとめて読むと、やはり連載を追いかけるのとは異なる興趣がある。いまさらながら巧みにはりめぐらされた伏線などもよくわかって、そうか、こうなっていたんだな、などと感心させられたりします。

 よくこんな複雑に入り組んだプロットを整理できるよなあ。特に後半となる魔法世界編は群像劇以外の何ものでもないわけで、主役のネギですら無数の登場人物のひとりであるに過ぎません。

 膨大な数のキャラクターひとりひとりの行動を整理し、関連付け、一本の物語に編み上げてゆく凄まじさは、もはや想像を絶するものがあります。いったい何をどうしたらこんな漫画を週刊連載で書けるようになるんだ……。構成力の勝利ですね。

 構成力とは「物語を作る力」! 複雑に絡みあう物語を構成し、組み立ててゆく力に他なりません。

 この能力は年齢的な絶頂期があって、歳を取ると衰えていくように思えます。相当に天才的な物語作家でも、物語を圧縮してコンパクトにまとめる技量はやがて失われていくものなのです。

 永野護は年をとるとその力がなくなるからいまたくさん物語をストックしている、とどこかに書いていました。それくらいシビアな話だというわけです……。

 まあ、そういうわけで、『ネギま!』は過去十年間の少年漫画のなかでも、指折りの傑作といっていいでしょう。この漫画ほど様々な面での快楽指数を高めた作品はちょっとほかに思いつかない。何しろヒロインが数十人からいますからね……。

 いや、ヒロインの数だけなら最近のソーシャルゲームなどでこれを上回るものも出て来ているわけですが、『ネギま!』の場合、その全員が一本の物語に絡む!

 初めて千雨が出て来たとき、だれがあそこまでの活躍を予測したことでしょう。およそ女の子キャラクターの類型を網羅しているという一点において、これを超えるものは今後もそうそう出て来ないのではないでしょうか。

 ほとんど実験的ですらあることをやっているのに、内容は限りなくエンターテインメント。すごいとしかいいようがありません。

 しかし、そのバロックを極める高密度情報の圧縮は、同時に『ネギま!』という作品の弱点でもある。端的にいって、この漫画、読んでいて疲れるよねという(笑)。

 特に魔法世界編ではちょっとわけがわからないくらい人物と情報が錯綜しています。