タイトルからわかるとおり、この作品の舞台はカルバニアという架空の王国。まだ十代の王女タニアが、この国で初めての女王として即位したあたりから、物語は始まる。口うるさい貴族やら老臣やらに支配された王宮で、タニアが心を許せるのは、親友の公爵令嬢エキューだけ。
古くさい慣習やしきたりと悪戦苦闘しながら、ふたりは少しずつ女性の地位と権利を確立していく。ある種、フェミニズム的といえなくもないけれど、堅苦しく考える必要はない。
ときには頭の固い男たちと衝突しながらも仕事に励むタニアたちの姿は、ほとんど現代のOLそのもの。何も考えなくても十分楽しく読めると思う。
それぞれに意見も価値観も違う複数の人物を公正に描こうとする寛容さが、この作品の最大の魅力だと思う。
そういう意味で、第10巻および第11巻に登場する女性ナタリー・ホーンの描写は素晴らしい。
カルバニア一の豪商の娘だった彼女は、あるとき、火事によってその財力のすべてを失い、顔を含む全身に大やけどを負ってしまう。
しかし、彼女はその困難を克服し、エキューの父親タンタロット公爵への十数年越しの恋を実らせて、かれと結婚することになる。
あいかわらず、杖なしでは歩くこともできない身の上だが、その人柄は明るく、朗らかで、屈託がない。
そんなからだでお産が出来るのか、と問うエキューに対し、ナタリーは笑顔で答える(エキューの母親はお産で亡くなっており、彼女はそのことがトラウマになっている)。
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