新装版フォーチュン・クエスト(1) 世にも幸せな冒険者たち (電撃文庫)

 一昨日、オフ会で二十冊以上のライトノベルを持ちだしてライトノベルの歴史の一面を概観しました。若年層はポカーンとしていましたが、一定以上の年齢のひとたちには喜んでもらえた模様。

 『魔群惑星』とか『黄金拍車』とか、なつかしライトノベルの極みみたいなものを持っていったので、読んだことがあるひとにとってはおもしろい内容だったと思います。

 まあ、しらないひとにとっては何を云っているんだかさっぱりわからないひと時だったとは思いますが……。

 小一時間話した結果として、昔のライトノベルのほうがいまより面白かったというのは、あれはウソだな、とあらためて思いました。

 もちろん、ひとの価値観はそれぞれである以上、昔のほうがいまより良かったという意見を持つひとが存在することは否定できない。

 いくらか過去を美化しているのではないかという疑いを消すことはできないにせよ、たしかに80年代、90年代にも傑作はいくらでもある。

 しかし、一般論として「昔のライトノベルはとにかく面白かったが、いまはダメ」的なことを云われると、これは首肯しかねます。

 いまのほうが作品の絶対数が多いし、競争も激しいので、平均レベルも頂点のクオリティもずいぶん高いのではないかと思います。ライトノベルもやっぱり時代とともに進歩しているんですよ。

 たしかに萌え日常系が席巻するゼロ年代やテン年代に比べ、80年代、90年代は遥かに「物語志向」でした。そういう意味では、物語的なものが好きなひとにとってはこの時代の作品のほうがおもしろく思えて仕方ない。

 また、80年代ごろにはライトノベルとまではいい切れないが近いところにある作品群が存在し、そのなかには田中芳樹の『銀河英雄伝説』や『アルスラーン戦記』、菊地秀行の『吸血鬼ハンター』などのオールタイム・ベスト級の傑作があります。

 そういう文脈を捉えるなら、たしかに「昔のライトノベルはおもしろかった」と云えなくもない。しかし、小説技術的なクオリティで云えば、あきらかにいまのほうが高くなっているように思います。

 また、読者のターゲッティングもより明確になっているでしょう。80年代から90年代前半にはだれをターゲットにしているのかよくわからない作品がけっこうあったんですよ。それが混沌としていておもしろいとも云えなくはありませんが……。

 80年代、ライトノベルという概念が生まれるよりまえのライトノベルを代表する作品として、渡邉由自の『魔群惑星』があります。