弱いなら弱いままで。

言葉により築かれし空想の王国を旅してまわる日々。(1636文字)

2013/07/24 03:15 投稿

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  • 小説

(この記事は著者さんにお願いし期間限定で無料公開させていただいております:ブロマガ編集部)

見えない都市 (河出文庫)

 いまさらいうまでもないことだけれど、小説を読むことが好きである。市井のシロウトが書いたものから、一流のプロフェッショナルが技芸を凝らした作品まで、小説であれば片はしから読む。

 なぜこんなにも好きなのだろうかと考えると、そこに自由があるからではないか、と思える。美文に淫するにしろ、物語を開花させるにしろ、小説はほんとうに自由だ。

 何もジェイムズ・ジョイスやらの実験文学の話をしているのではない。そこらのあたりまえの小説にも、奔放な自由は渦巻いている。

 だって作家が生み出すまではまったく白紙の世界に、言葉だけで広い王国が創造されるのだ。まさにひとの身にして神をまねる所業じゃないか。しかもその国の風景はどんなに破天荒でもかまわないと来ている! これほどの自由があるだろうか。

 ぼくには小説を書きあげる才能はない。しかし、その自由に対しては、つよい憧憬を抱いている。「もしもピアノがひけたなら」ではないが、もしも小説が書けたならさぞ楽しいだろう。ぼくは日がな一日、王国の手入れをして過ごすのではないか。

 それぞれの王国は、その領土の大きさにかかわらず、地上に唯一無二の独立国である。ある国は荒廃し、またある国は夢のように栄えているかもしれない。しかし、いずれにしろ、それぞれがユニークであることに変わりはない。

 小説という王国ほど、ぼくがつよくつよくあこがれる国は他にない。可能なら自分の力で国をひらき、王として君臨してみたい。ああ、どうしてぼくはその才能を持って生まれなかったのだろう。まったく、嘆かわしい。

 まあ、そうはいっても小説のほかにも国はある。この記事にしてからがひとつの小さな国家の領土だ。こうしてぼくもぼくなりの方法で国を築いているのだから、必ずしも不幸とはいえないだろう。

 

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