ファイブスター物語 (11) (ニュータイプ100%コミックス)

 以下、例によって永野護『ファイブスター物語』を知らないひとには一切無用の考察。連載再開にあたって、突然、一切の設定が変更され、しかし物語そのものは何ら変わることなく進んでいくことになった『ファイブスター物語』。さて、来月の展開はどうなるのでしょう?

 この作品には、ひとつ他にない大きな特徴があって、それは「年表その他の設定により未来の情報がわかっている」ということです。ついに開幕した魔導大戦(マジェスティック・スタンド)にしても、アトールの巫女、じゃない、「時の詩女」マグダルの活躍によって星団暦3075年に集結することがわかっています。

 さらにその先の3100年にはボード・ヴュラードことミッション・ルース大統領が亡くなることもわかっていますし、3159年に大侵攻(モナーク・セイクレッド)が始まることも、その数百年後に天照がコーラス王朝を倒し星団を統一することも、すべては規定事項です。

 これはロボットやドラゴンに関する設定がことごとく変更されたとしても変わらない、『ファイブスター物語』の究極の根幹ともいうべき設定なのです。まあ、こんなことはこの文章を読んでいるひとにとっては常識の範疇に入ることでしょう。

 さて、その『ファイブスター物語』の「未」登場人物のなかにノルガン・ジークボゥという名の青年がいます。いまだに本編には登場していないのですが、連載中団から現在に至るまで少しずつ明かされてきた設定によってその存在があきらかとなった人物で、ファンの間では未来のフィルモア帝国皇帝レーダー9世(ナイン)なのではないかといわれているんですね。

 レーダー9はフィルモア帝国最後の皇帝で、天照とLEDミラージュ、じゃない、ツァラトゥストラ・アプターブリンガーによる侵攻に抵抗したとされる人物です。結局、天照とツァラトゥストラには勝てず、さらにこの戦いに際してカラミティ星は崩壊し、フィルモア帝国は滅亡してしまうことになります。

 連載がそこまで描かれるのかどうか限りなく怪しい、描かれるとしても何がどうなっているのやらさっぱりわからないような遠い未来、数百年後のエピソードなのですが、それでもそんな先の展開の伏線をきっかり敷いてくるあたりがF.S.S.の恐ろしさ。

 この作家は本気で数千年の物語を描き尽くそうとしているのです! 絶対に描き切れないことがわかり切っているのに……。