アニメ『輪るピングドラム』は多くの名台詞に満ちた作品でしたが、そのなかでも「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」という言葉の印象は強烈なものがありました。「きっと何者にもなれない」、その限りなくリアルな響き。
多くのひとが人生の前半で「何者か」になりたいという夢を抱き、しかし何者にもなれずに人生を終える。だからこそ、「きっと何者になれない」という決め付けはあまりにも的確にぼくたちの心を射るのです。そうなのだ、自分もまた「きっと何者にもなれず」一生を閉じるに違いないのだ、と。
この場合の「何者か」とは「成功者」とか「特別な人」というニュアンスを孕んでいることでしょう。「何者でもない」群衆のなかにあって鶏群の一鶴とでもいうべき、特別な才能と個性をもったひと。
言葉の上っ面だけを捉えるなら、本来、すべてのひとが「何者か」なのであって、「何者でもない」人間などいないのだ、と考えることもできなくはない。「ナンバーワンにならなくていい。もともと特別なオンリーワン」とか、そういう考え方ですね。
心からこの言葉に共感し、「オンリーワンであるだけで十分だ」と思えるひとはほんとうの人生の勝ち組かもしれませんが、大半のひとは「そうはいっても何者かになりたい。ナンバーワンになってみたい」と望んでいることでしょう。そして同時に「そんなことは無理だ」という絶望を抱えてもいる。
「何者か」になるということがどういうことかというと、周囲に「何者か」として見られるということです。そのとき、ひとは自分の人生をオリジナルなものとして感じることができる。ナンバーワンとオンリーワンはべつに対立する概念ではない。ナンバーワンこそがだれよりもオンリーワンなのですから。
さて、前置きが長くなりましたが、それでは「きっと何者にもなれない」ぼくたち凡夫の群れはどうしたらいいのでしょうか?
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