北村薫『中野のお父さん』を読みました。じつはこの本は自分で読むために買ったわけではなく、退職して暇を持て余している母への贈り物だったのですが、せっかく買ったのだからと一頁目を読み始めたところ、すらすらと読み耽ってついに読み終えてしまったしだい。
はっきり云ってこの作品自体はあまりどうということはないごく軽い小説なのだけれど、それでも北村薫という人の「凄み」は十分に感じさせられます。とにかく文章が巧い。いっそばかばかしいくらい巧い。
どう云えばいいのか、読み始めてから読み終えるまで一切つっかえるところがないのですね。かれの書く文章はただ清らな小川のようにさらさらと流れていくばかりで、決して濁ることがない。読み終えた後は、「ああ、もう読み終えてしまったか」という意外さばかりが残ります。
特に気を衒ったところがない、あたりまえの日本語のようではあるのだけれど、どういうわけか際立った清冽
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