弱いなら弱いままで。

淫靡と背徳のグラフィックノベル版『エルリック・サーガ』について語ってみたよ。

2020/12/17 22:05 投稿

  • タグ:
  • マイケル・ムアコック
  • エルリック・サーガ
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 そういうわけで、とりあえず動画の「台本」を一本書いて、動画を配信してみました。むむー。なんかつまらないな。まあ、それは追々改善していくとして、その「台本」をここに上げておきます。以前書いたグラフィックノベル版『エルリック』の話です。

 良ければじっさいの動画と比べてみてください。細かいところがいろいろと違っているかと思います。


 ◆

 こんにちは、オタクライターの海燕です。今回はグラフィックノベル版の『エルリック・サーガ(1) ルビーの玉座/ストームブリンガー』の話をしたいと思います。

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 さて、『エルリック』は世界的に有名なヒロイック・ファンタジーの名作です。主人公は一万年も続いている半人類の帝国メルニボネの皇帝エルリック。

 生まれつき白子(アルビノ)で虚弱な体質のかれは、薬物と魔術によってその躰を長らえ、人の背丈よりも巨大なルビーをそのままに象嵌した「ルビーの玉座」に君臨しています。

 しかし、かれは残虐冷酷なメルニボネ人の性に馴染めず、つねに倫理的な葛藤を抱えているのでした。しかも、この物語の序盤でかれは〈黒の剣〉と呼ばれる魔剣ストームブリンガー、嵐を呼ぶもの、ですね、これを手に入れます。

 人の魂を啜る剣であるストームブリンガーはエルリックに立ち上がり戦うための力を与えてくれますが、しかしときにエルリックの意思に反してかれの愛する人々を殺戮していくのです。

 このパラドックスに満ちた設定、そしてその昏い悲劇性、それが半世紀以上も昔、『エルリック・サーガ』をまったく新しいヒロイック・ファンタジーの傑作に仕立て上げたものなのです。

 さらにいうと、『エルリック』の世界では、善と悪、白と黒ではなく、〈法〉と〈混沌〉というふたつの勢力の神々が覇権を競い合っています。

 エルリックたちメルニボネ人は〈混沌〉の神アリオック、古いファンにとってはアリオッチという読みのほうが合うのですが、そのアリオックに忠誠を誓い、しばしばかれにイケニエとして奴隷の身を奉げたりしているようです。

 いいですねえ、この洗練された野蛮さ。メルニボネとか〈夢みる都〉イルムイルという響きそのものが何ともいえないダークなロマンを湛えていますが、絵の形で魅せられるとさらにいっそう魅惑的に見えるようです。

 リベラルな『アルスラーン戦記』あたりにはないこの淫靡さ。陰鬱さ。そう、『エルリック・サーガ』はいまはやっているダーク・ファンタジーの先駆けであるといえるかもしれません。で、このグラフィックノベル版はその世界観をさらに昏く研ぎ澄ましています。

 『エルリック』の原作は、たとえばクラーク・アシュトン・スミスあたりに比べると、意外にあっさりしているというか、もうひとつ頽廃具合がすっきりしているところがあるのですが、このグラフィックノベル版はガチです。

 それはもう、デカダンスとエロティシズム、その窮みといっても表現が為されています。好き。もう、大好き。こういうのが見たくてオタクやっているんだという感じですね。

 見てください、この禍々しい美しさ。メルニボネの邪悪で残酷な人々の生活がじつに耽美にエロティックに描き出されています。ぼくはこの手の雰囲気がほんとうに好きでねえ。邪悪とか暗黒とか聞くとわくわくしてしまう、そういう性格なのです。 

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