惑星のさみだれ 1 (ヤングキングコミックス)

 いま、『YOUNG KING OURS』で『スピリット・サークル』を連載している水上悟志の前作『惑星のさみだれ』はセカイ系の物語の集大成とでもいうべき傑作でした。ストーリーもキャラクターもエンターテインメント性も文句なし。全10巻できれいに完結している点も素晴らしい。未読の方にはぜひオススメしたい作品のひとつです。

 この作品では「大人」あるいは「成熟」という概念がひとつのテーマになっています。成熟社会のなかで見失われた「成長し、大人になること」の価値を正面から問うた作品といってもいいでしょう。

 作中、ある少年が仲良く喧嘩している年上の青年たちの姿を見て「今は辛いことばっかりだけど 大人になれば楽しいことはあるんだ」と悟る場面があります。ぼくはこの場面が好きでねえ。『惑星のさみだれ』全体を象徴するような場面だと思います。

 そこで今回のタイトルに繋がってくるのですが、大人には子供を励ますため、人生を楽しんで生きる責任があると思うのです。

 大人たちがみんな「仕事は辛いし、人生はつまらない。何もいいことなんかない」とばかり言っているようでは、子供たちが成熟したくなくなるのはあたりまえ。だから、大人は「大人であることは子供時代よりもっと楽しい」といい切れる人生を歩まなければならない。

 もちろん、それは簡単なことではないし、責任感だけで人生がおもしろくなってくるはずもない。しかし、大人になることがまるで楽しくないような社会に未来はないし、じっさい、大人になることはそう悪いことではないと思うのです。

 ぼくは大人になってからのほうがずっと人生を楽しんでいるし、何より楽になった。それはもう、あの地獄の日々が嘘のようです。