永野護の傑作ヒストリカルロマンティックバトルストーリー(なんだそのジャンル)『ファイブスター物語』のファンブック『トレーサーエクストラ2』を購入しました。

 このシリーズの第一弾では川原礫など男性クリエイターたちの視点からF.S.S.の世界が読み解かれたわけですが、第二弾では同じ作品が女性クリエイターたちの視点から語られます。ふだん仲間内でF.S.S.話で盛り上がることは多くても、なかなか女性の意見を聞ける機会は少ないわけで、ぼくにとっては貴重な一冊といえそうです。

 まあ、そうはいってもファン的に最もバリューが高いのはいうまでもなく冒頭12ページに及ぶ作者による登場人物解説。作者自ら「わけのわからない用語ばかりだけれど頑張って推理してね」(意訳)と書く通り、いやー、知らない固有名詞が多すぎる。

 特に凄まじいのが「炎の魔女」と記された謎の女性「あらたま」の項目で、出てくる固有名詞がひとつも理解できない(笑)。「セントリー」というのがドラゴンのことであろうこと、「炎の魔女」というからには炎の女皇帝絡みの人物であることは想像できるけれど、それ以外はほんとうにさっぱりわからない。

 連載を20年間追いかけているぼくですらそうなのだから、新たにこの作品にふれたひとは本を放り投げたくなるのではないでしょうか。しかし、これこそ『ファイブスター物語』であって、いまは謎としかいいようがないこれらの単語の意味が解明される日がいつか来ることも間違いないのです。

 一読者としてはひたすらに来月からの(ついに!)連載再開を待ちたいと思います。さて、『ファイブスター物語』と女性というテーマで語るなら、決して欠かすことをできないのがファティマという存在でああることは間違いありません。

 ひとに似てひとよりも美しく、健気で、従順で、「男の理想」をそのまま形にしたようともいわれる妖精たち。ファティマをどう扱うべきかということが、この作品のひとつの大きなテーマになっていることは間違いありません。

 ここらへんのことについて女性読者は特に色々なことを感じるはずだと思うのですが、やはりというか意見が分かれていて興味深かったです。ひとつの意見としてあるのは「ファティマはしょせん兵器なのだからそういうものとして扱うべき」「人間の女のように扱うのはキモチワルイ」という考え方です。

 これはフェミニストを自認するある女性の意見なのですが、ひとつの考え方としてありでしょう。ただ、それが正解かというと、やはりそういうふうには思えない。

 まずファティマという存在を「ただの兵器」として捉えることにはやはりどうにも無理があります。たしかに「ファティマは人間ではなく兵器として扱われたとき最も安定する」という設定はありますが、それはファティマがダムゲートコントロール(ファティマを戦闘兵器たらしめる精神支配)を受けているからそうなのであって、ファティマ本来の望みが「兵器として活用されたい」というものであるわけではありません。