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F35はほんとうにポンコツ欠陥機なのか? ネットの疑問を検証してみた。

2019/06/03 04:19 投稿

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 えー、最近、Twitterを眺めておりますと、「F35大量購入問題」というものをよく見かけます。

 これは「アベがポンコツ戦闘機のF35を一度に100機も爆買いした! これは戦争のための準備に違いない! そんな金があるならもっと福祉に使え!」というようなご意見なのですが、あまりに一方的なトーンに、ぼくは疑問を感じずにはいられませんでした。

 ほんとうにF35はポンコツの欠陥機なの? 安倍首相はトランプ大統領へ献上するために購入したの? その点がちょっと鵜呑みにはできなかったわけです。

 そこで、書籍や雑誌を購入したり、Googleさんにお伺いを立ててみたりして、調べてみました。で、結論からいうと、F35の購入が適切であるかどうかは判断できないものの、少なくともネットの意見の多くは誤解や極論であることがわかりました。

 とはいえ、ぼくも特にミリオタでなし専門家でなし、あくまで短期間で調べ上げた情報ですからすべてが正しいとはいい切れません。ご意見、ご批判はうけたまわります。大筋としては間違えていないと思うけれどね。

 とりあえず、主だった「ネットの疑問」を六つ並べて答えてみたので、興味がある人は読んでみてください。ちなみに、『航空ファン』2019年7月号、『F35「超」入門』、それにいくつかのネット上の記事を参考にさせていただきました。ありがとうございます。

ネットの疑問①

 F35はつい最近、墜落したばかりだ。そして、アメリカでも墜落事故を起こしている。これは欠陥機としかいいようがないではないか。こんなポンコツ機体を購入するアベは売国奴だ。

海燕の意見①

 これに関しては、墜落事故の事実そのものは間違いではない。先の4月9日、航空自衛隊第305飛行隊所属のF35A(70-8705/AX-5)が太平洋上で事故を起こしている。そして、昨年の9月28日にもアメリカでF35Bが墜落している。

 しかし、逆にいえばF35の墜落は現在、この2件のみ。これは、アメリカ製戦闘機の歴史において、記録的な少なさであるといって良い。

 実際、F35はこのアメリカでの事故が起こる前にF35は20万時間連続無事故記録を打ち立てており、これはきわめて異例の数字だ。現実に、現在のアメリカの主力戦闘機であるF22は累計飛行時間10万時間までに3機が墜落している。

 もちろん、理想をいうなら事故はゼロであることが望ましいわけだが、1,2件の事故が起きたからといって特別に欠陥があるかのように喧伝することは間違いとしかいいようがない。
ネットの疑問②

 F35の購入代金、維持管理費用は数兆円に及ぶ。この大金を福祉に回せば多くの人が救われるのではないか。

海燕の答え②

 たしかに、一面ではそうだということができる。しかし、それをいうのならF35ひとつのみならず、自衛隊の運営にかかる費用すべてが無駄な出費ということになるだろう。

 現実には、自衛隊の国防能力は日本の安全保障のために必要な経費であり、だからこそ国会で予算が承認されているのである。F35を購入しなければその分の予算が浮くことは事実だが、そのかわり、日本の領空警備能力は格段に落ちることになる。

 その結果として、日本の安全保障は危機的な状況になるかもしれない。福祉は福祉として重要な問題だが、だからといって軍事費を削って良いということにはならない。
ネットの疑問③

 このような戦闘機の大量購入はあきらかに戦争を目的としたものだ。アベは戦争をしたくてたまらないのではないか。平和は外交で勝ち取るべきだ。

海燕の意見③

 戦闘機を大量に購入したからといって、それで戦争をするつもりだとは限らない。事実、自衛隊はいままで多数の戦闘機を運用してきたが、先の太平洋戦争以来、一度も実戦に使用していない。

 もちろん、だからといってそれらの戦闘機が無駄だったというわけことにはならない。航空自衛隊の兵器の役割の第一は日本の領空の制空権を守ることであり、その役割を果たしている以上、戦闘機に抑止力としての存在意義は十分にある。

 また、安倍首相が戦争をしたくてたまらないのかどうかは何しろ内心のことなので何とも判断できないが、少なくともそうだと考えるべき根拠はない。

 「これほどの数の戦闘機を買ったからには、戦争をするつもりに違いない」という人は、いままで自衛隊が200機のF15を所有していながら一度も戦争していないことをどう考えているのだろうか。

 平和は外交で勝ち取るものであることはその通りだが、その外交の前提となるのは対等の軍事力である。軍事的に圧倒的に劣っている状況と、一定の利がある状況、どちらが外交的に有利であるかはあらためて語るまでもない。
ネットの疑問④

 F35の購入はアベがトランプとのゴルフで決めたことで、目的はトランプに大金を献上することだ。こんなことが許されていいのだろうか。

海燕の意見④

 あまりにもあたりまえのことだが、F35の購入は安倍首相がトランプ大統領とのゴルフの間に独断で決定したことではない。

 この件に関する予算はすでに2018年の段階で国会の予算審議を通過しており、安倍首相がゴルフの間に決定することは純粋に物理的な意味で不可能である。

 それでもトランプ大統領へのおもねりのためにF35の購入が決定されたのではないかという疑いを捨てられない人もいるかもしれない。

 だが、実際には2013年12月に定められた「防衛大綱」および「中期防衛力整備計画(2014~2018)」には「近代化改修に適さない戦闘機について、能力の高い戦闘機に代替するための検討を行い、必要な措置を講ずる」、「航空偵察部隊1個飛行隊を廃止し、飛行隊を新編」と明記されている。

 2013年のアメリカはオバマ政権下であり、トランプ現大統領はいち民間人、そのただの民間人のために戦闘機の購入予定を立てることなどありえるはずがない。
ネットの疑問⑤

 すでにイタリア、カナダ、ドイツ、の三国は欠陥機であると判明したF35の購入を中止している。そんなポンコツを日本が購入する意味があるだろうか。

海燕の意見⑤

 たしかにイタリアはF35の調達を断念している。しかし、それは「現在の情勢のもとでは、技術的諸問題と労働力不足に関連して戦闘機製造計画を縮小することは追徴金の原因となるため」という金銭的理由であり、F35が欠陥機であるからではない。

 また、カナダは現在、次期戦闘機の導入を検討中だが、F35はその候補のなかに挙がっている。F35に決定しないのは、ユーロファイター・タイフーン、ラファール、スーパー・ホーネットなど、その他の機体でも十分に任務に耐えるという理由であり、F35が欠陥機だからではない。
ネットの疑問⑥

 アメリカの監査院ではF35に966件もの不具合が指摘されている。これはF35が欠陥機である証拠だ。このような機体を買わせられたのは災厄だ。

海燕の意見⑥

 ここでいう「アメリカの監査院」とはGAO(Government Accountability Office)という組織のことで、国民が収めた税金が適切に使用されているかという観点からさまざな政府の支出、あるいは事業などについて調査し報告書をまとめている。

 「966件もの不具合」とは、このGAOがリリースした報告書に記載されている情報であるが、そこには対処しなければ安全にかかわる重大な不具合から、ごく細かい不具合に至るまで、試験・評価の過程で指摘されたものすべてが含まれており、飛行の安全に関係しないものもある(どうやらその大半は機体よりも超複雑化したソフトウェアの問題らしい)。

 その966件のうち、「飛行の安全、情報保全、あるいはそのほかのクリティカルな要求事項に関わる不具合」にあたるカテゴリー1に属する不具合は111件、そしてそのなかで全規模量産開始までに対処が間に合わない見通しとなっているものは25件に過ぎない。

 25件でも十分だと思われるかもしれないが、少なくとも不具合の所在はわかっているわけで、段階的にアップデートしていくことは可能だろう。

 これはMicrosoftのWindowsが発売後にアップデートしていくことに近い。F35は戦闘機であると同時に「空飛ぶ巨大コンピューター」であり、「大規模ネットワークの突端」である。ソフトウェアの部分は後から改善していくことが可能なのだ。
 

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