弱いなら弱いままで。

押井守と神山健治で考察する映画におけるファンサービス。(1276文字)

2012/11/14 12:00 投稿

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  • 押井守
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イノセンス アブソリュート・エディション [Blu-ray]

 有名な話だ。神山健治監督はテレビ版『攻殻機動隊』を作るとき、「押井守のコピーでかまわない」と考えたという。まさに押井守その人が作ったかのように思われる作品に仕上げよう、と。

 しかし、結果として出来上がった『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』は押井守の作品とは微妙に異なる作風に仕上がっていた。具体的には、どこまでも思索的な押井作品と比べ、エンターテインメントの度合いが高かったのだ。

 この体験を踏まえ、神山健治は「オリジナリティを発揮するためにはまずコピーするべきである」という考えに行き着く。逆説的なようだが、ほんとうのオリジナリティとは、何かを模倣したとき初めて表れるものなのだと。

 じっさい、視聴者の立場で見ても、押井守と神山健治の作風の違いはあきらかだ。神山監督としては押井監督の真似をしているつもりなのかもしれないし、じっさい「そっくり」といいたいようなところもあるのだが、それでもやはり両者は違う。

 たとえば、押井監督は映画『イノセンス』を作る時に、前作の主人公草薙素子を画面に出さないという選択を行ったが、神山監督は決してこのような映画を撮らないだろう。神山監督が撮った三作の『攻殻機動隊』では、いずれも素子が全面に出て活躍する。神山監督はファンの期待を裏切らないのだ。

 

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