海燕さんがこの作品についてよく語っていたので、観てきました。かなりすごい作品ですね。監督の「人間は複雑な生き物なんだぜ。単純に善悪だけでは測れないんだぜ」という声が聞こえてくるようでした。

　この家族がどうしても犯罪をしなければならないわけではない、というのはその通りだと思います。海燕さんが指摘した以外では、中盤で夫婦がそろって失職した後に、仕事を探す描写が無かったりしますし。


そしてこの映画で大事なのは、この家族は優しいということです。少女（ゆり）の誘拐は犯罪行為ですが、寒い夜に家の外で放置されている少女に暖かい家と食事を提供することは、善行と言えるでしょう。他にもいろいろと家族内の優しい描写があります。

一方で、犯罪行為を悪いと自認する発言が皆無に近い。ゆりが家にいやすいようにと気遣いする場面がありますが、その手段が万引きをして家の役に立てるようにする、というものなのだからどうしようもありません。家族以外はカモくらいにしか思っていない。

このあたり、この家族を悲劇の主人公とも、単なる犯罪者集団とも言いきれなくしていますね。人間を多面的に描いていて、私好みの作品でした。