(メキシコ移民について)メキシコは、ベストではない人々、問題があり、麻薬や犯罪を持ち込む人々を送り込んでくる。彼らは強姦魔だ、中には善良な人もいるかもしれないが。
『ズートピア』は美しくもきびしい理想主義を謳いあげるディズニーの傑作映画である。
物語の話をしよう。力強い物語の話を。
いまこそ、その需要がある。世界を憎悪が覆い、都市を反目が支配するとき、そのときまさに物語の力が必要になるのだ。
想像力を巡らせよう。気高い理想を語り、怒りと差別心を封じ込めよう。
ぼくたちにはそれができるはずだ。なぜなら、ぼくたちは偉大な夢を見るよう生まれついているのだから。
ディズニーの新作映画『ズートピア』はある崇高な理想の物語、そして、ときにその理想が挫折し、打ち砕かれる現実についての寓話だ。
主人公は新米警官のジュディ。ある田舎町に生まれた彼女は、保守的な両親の反対を振り切って警察学校を首席で卒業し、ウサギ初めての警官として動物たちの理想都市ズートピアに着任する。
しかし、あこがれのズートピアでジュディを待っていたもの、それはウサギでしかも女性の警官などだれも認めはしないというきびしい現実だった。
それでもくじけない彼女は、必死に努力し、48時間以内にひとりの行方不明者を探し出すという約束を署長と交わす。
もしそれができなければ警官を辞めるという条件だった。
ジュディは偶然に知りあったキツネで詐欺師のニックとともに捜査を開始するが、やがて彼女はズートピア全体を揺るがす大陰謀に遭遇してしまう――。
主人公が動物たちということで、一見すると子供っぽくも見える映画である。大人の視聴者にとっては、それほど面白そうには見えないかもしれない。
しかし、これは、今年を代表する大傑作だ。
シンプルでコミカルなシナリオが見ていて面白いというだけではなく、非常に深く考えさせられるテーマを持った作品である。
すみすみまで練られた脚本はただ完成度が高いという次元を超えて、観客に強く訴えかける力を持っている。つまり、「あなたならどうする?」と。
だれが見てもわかるように、無数の種類の動物たちが集うズートピアはアメリカ合衆国の暗喩だ。
つまり、この映画のテーマは「アメリカ合衆国の理想と現実」ということになる。
「だれでもなりたいものになれる」というズートピアの理想はまさにアメリカン・ドリームのことであり、そして、ズートピアが抱える問題はじっさいにアメリカが抱え込んでいる問題そのものである。
そういう意味で本作はきわめて政治性の高い映画であり、保守的にも見えるディズニーが、その実、決して単純ではないことがよくわかる。
ただ、「差別」という重いテーマを扱っていながら、この映画が決して重たいだけのものになっていないこともたしかだ。
基本的には痛快無比なエンターテインメントであり、ちょこまかと動きまわる動物たちのアクションを見ているだけでも楽しい。
ただ、大人の観客はその向こうに深い問いかけを感じるというだけのことだ。
そう、本作のテーマは差別問題である。優秀な成績で警官になったジュディはまず性差別に直面し、彼女の相棒ニックは「キツネは嘘つきで信用できない」という人種差別に苦しんだ挙句、その偏見をなぞるように詐欺師になってしまっている。
しかし、ジュディは決してあきらめないし、ニックもひょうひょうとした態度の裏に優しい素顔を持っている。
差別と反目が支配的なズートピア社会において、どこまでも理想を信じるジュディはさんざんに傷つき、痛めつけられる。それでも彼女は前進しようとする。その姿勢には胸が熱くなるものがある。
この映画が9・11以降のアメリカに伝えようとしているものはあきらかだろう。
そして、ドナルド・トランプが圧勝を続け、気高い自由と平等の理想が地に堕ちようとしているかに見えるいま、この映画は強く訴えかけてくる。
『ズートピア』はつまり「アメリカの理想を守ろう」といっているのだ。
そういう意味できわめて純度の高い理想主義の映画である。
ただ、さらにすばらしいことに、『ズートピア』は単なる理想主義の映画に終わらない。
まさに作中の言葉にあるように「人生はミュージカルではない」。
ジュディは
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