ビームス スタイリングディレクター 丸山珠花さん
■人を育てるうえで心がけているのは、否定をしないこと
ショップスタッフはお客様よりもオシャレでなければならない。この部分を強化することが、丸山さんに課せられた最大のミッション。
「週に1回、トレンド研究や素材などに関する豆知識だけでなく、オシャレスタッフNo.1を決めるベストスタイリングアワードを配信しています。今週のオシャレさんを私たちが男女数名選び、オシャレポイントをコメント付きで紹介しているのですが、ベストスタイリングアワードを始めてからスタッフのコーディネイトセンスが上がったと、社内の評価も上々。
全国の店舗をまわって行っている勉強会も、私たちが講義をするだけではつまらないと思うので、取引先ブランドのデザイナーさんを招いてブランドの説明をしていただいたり。地方店のスタッフたちは、デザイナーさんと直接話せる機会はなかなかないので、喜ばれています」
丸山さんの出張必需品その2は、勉強会用の資料とノート&ペン。「勉強会は、タイムリーな情報を盛り込むよう心掛けています。4月はパリコレ帰りだったので、パリコレの裏話をしました」
これでいいのかな? と常に自問自答していたという丸山さん。1年経った今、社長から"頑張ってるね"と言ってもらうことができ、人を育てることが意外と向いているのかも、と思うようになったとか。
「25年も同じ会社にいるのは、ビームスという会社が好きだから。私は会社に育ててもらったので、今度は私が20~30代のスタッフを育てて会社に恩返しをしていかないと。"服育"という仕事に、少しだけ手応えを感じてきたからか、最近そんな気持ちが強まりました。
人を育てるうえで気をつけているのは、オシャレには正解はないので、否定をしないこと。例えば、そういう着方もあるけど、こういう風にしたら見え方が違うでしょ? どっちがいい? というように。勉強会でスタッフが変わっていく姿だったり、ひとつの洋服に対して同じ喜びを持てたり。そんなところに、やりがいを感じます」
■憧れられるためには、年齢と向き合うことが大事
20代は仕事が楽しくて仕方なかった。30代も20代の延長で仕事にまい進。
「もちろん、40代の今も相変わらず仕事は楽しいです。でも40代は、自分のことだけに目を向けている訳にはいかなくなる。
母が体調を崩したとき、今まで仕事がいちばん、家族は2番で来てしまった自分に気が付き、これからは家族と自分のことをいちばんにしたいと思ったんですね。"ごめん、仕事だから行けない、またね"と言えたことが、今は胸が痛んで言えないんですよ。自分の時間も大切にしたいから、昔習っていた日本舞踊を再開したいと思っています。
自分の年齢と向き合うことも大事ですよね。私はまだ若い、30代と変わらない、という想いはナンセンス。年齢を受け入れ、自分に合ったメンテナンスをしていくことが、若いスタッフたちに憧れられる近道だと思うのです。目下の課題は体力作り。勉強会の後、20~30代のスタッフと一緒に飲みに行くのも体力がいりますから(笑)」
パリの本店でオーダーした、エルメスのバーキン。「30代に入ってから、年2回のパリコレ出張のたびにエルメス本店に通っていましたが、オーダーを取ってくれなかったのです。39歳のとき、ようやくオーダーシートを出してくれて。この機会を逃したら本店では一生買えないと思い、オーダーしました。頑張ってきた自分へのご褒美です」
(撮影/田中雅、取材・文/編集部・山崎)