舞台は南イタリアに浮かぶ小さな美しい島。主人公の20歳のフィリッポは、父親を海で亡くし、祖父と漁師を続けているが、島の漁業は衰退するいっぽう。唯一島が活気づくのは、年に数カ月の観光シーズンのみ。
夏を迎え、フィリッポ一家は自宅を観光客に貸し出して、自分たちはガレージで暮らすことに。同じ世代の若者が滞在して、彼らの世話をしながら心を通わせるフィリッポ。同時に、アフリカからたどりついた難民の母子をかくまうことにもなり......。
小さな島でつつましく生きる人々、北イタリアからのリゾート客、アフリカからの難民たち、という、まったく違う世界に生きる人々がこの作品では描かれています。
アフリカとイタリアの間に位置するこの島には、アフリカから大勢の難民たちが流れ着く。観光以外に収入源がない島では、難民の存在は大きなマイナスイメージになるからと、客たちに知られないよう厳しく上陸を取り締まり、難民を助けたりかくまったりすることが大きな罪とされてしまう。
「溺れた者は人種を問わず助ける」という海の掟に従って、漁に出た先で難民を助けたフィリッポの祖父。そのなかの臨月の妊婦と子どもを自宅でかくまうことで、一家は危機にさらされることに。
リゾート客でにぎわい派手な音楽をかけたボートから、男女がいっせいにダイブするシーンと、難民たちがひしめきあうように乗った船が揺れて思わず人が海に落ちてしまうシーン。同じ海に人が飛び込むことがこれほどまでに違う意味を持つ皮肉に、胸が痛みます。
イタリア国内の格差の問題や、アフリカからの難民問題。身近には感じられないテーマですが、当事者たちをスクリーンで観ることで、問題の深さを実感できるような気がします。
解決策の見つからないテーマではありますが、幼さの残るフィリッポ君が、なんとかせねばと奔走する感じがすごくよくて。世界を変えるのは向こう見ずな勢いと若さなのかな。そうあってほしいと祈りたくなるような映画です。
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『海と大陸』[公式サイト]監督:マヌエーレ・クリアレーゼ
出演:フィリッポ・プチッロ、ドナテッラ・フィノッキアーロ、ミンモ・クティッキオ
原題:TERRAFERMA
4月6日(土)岩波ホール他にて全国順次ロードショー
(c)2011 CATTLEYA SRL・BABE FILMS SAS・FRANCE 2 CINEMA
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