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バレンタイン商戦の真っただ中。チョコレートが主役のこの時季、物語にチョコレートが登場するミステリをお手に取ってみてはいかがでしょうか? 読み始めたらページをめくる手が止まらない三作品をご紹介します。
『幽霊座』(横溝正史)
まずは筆者の大好きな横溝正史から。『幽霊座』(角川書店)は歌舞伎役者の失踪から物語が始まります。それから17年の時を経て、同じ芝居小屋で毒殺事件が発生。どちらの場にも居合わせた金田一耕助が事件の捜査に乗り出します。
若き日の金田一探偵が歌舞伎役者と懇意にしていたという意外な事実。そして毒殺に使われたのはチョコレート。梨園の確執に事件を解く鍵を見つけた金田一探偵は、失踪と毒殺事件の謎を見事に解決するのです。
歌舞伎とチョコレート、そして金田一耕助の意外な組み合わせに注目です。
『チョコレート・ゲーム』(岡嶋二人)
続いては岡嶋二人の『チョコレート・ゲーム』(講談社)です。名門中学校の生徒が次々と惨殺される事件が起き、きっかけとして浮かび上がる「チョコレート・ゲーム」。果たしてその謎のゲームとは?
犯人とされた中学生の近内省吾が自殺したことで、その父親が息子の無実を晴らそうと事件の真相を追いかけます。現代の闇の部分を描いた重い内容ですが、ストーリー展開にハラハラドキドキさせられます。
『毒入りチョコレート事件』(アントニイ・バークリー)
最後は海外の作品。ミステリファンの間で知らない者はいないという名作、アントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』(東京創元社)です。
実業家夫妻がチョコレート会社の新製品を試食したところ夫は一命を取り留め、妻だけが死亡。会社はその製品を生産しておらず、夫妻を殺害して利益を得る者もいない。ロジャー・シュリンガムを会長とする「犯罪研究会」の会員たちが事件捜査に乗り出すのですが、何がすごいって同じ事件に6人のそれぞれ違う推理が展開するんです。
一見単純そうな事件に6人の推理がぶつかり合って、真相は二転三転します。推理小説のマスターピースとも言える傑作です。
ミステリの謎はチョコレートのように簡単にとけないのが面白いところ。お気に入りのチョコレートをかじりながら、チョコレートのミステリに興じてみては?
(文/六島京)