菊地成孔(著者) のコメント

菊地成孔 菊地成孔
(著者)

>>6

 確かに大韓民国の人々は、「政治家は全員ダメだ」という感覚を持っていて、僕もストレートに移入できるところなんですけど、とにかく罰する力がすごくて笑、日本人はとても敵わないなと思います笑。フェミニストの女性が、自分が推しの男性アイドルを消費していることに対して自罰する、という物凄さで、なんというか、単なる多血質とかではなく、ある意味でものすごくリベラルなわけです。そのおかげでヘルコリアとか言い出すんですよね笑。リベラルのある状態までは所謂、ワイマール的なファシズム待望になりますが、それを超えると自罰というか、自傷的になるので、まあまあリベラル批判とか詮無いことは言いませんが。リベラルに発達段階があることは、リベラルもそうでない人も理解した方が良いと思うんですよ。今、リベラルではない人々の発達の状態しか認識されないので。

 20世紀は、まあリベラシオンとかグルマンディーズとかいうことをメインにパリと北京が比較対象になりやすかったわけですが、21世紀は、パリとソウルの同一性が高いと思っています(以下の話はドミューンの続きで聞けますが笑)。川を挟んで二分されていること(東京のケル「川向こう」とか、あんな粋な話ではないんで笑)、内需よりも外需が高いこと、そして反政府、反体制に成功経験があることで、そこはミラノだとか東京都は全然違いますよね。そして韓国はフランスよりも、引退した政治トップに厳しいです。民主主義が帝政と背中合わせだという事を、中国よりもはるかに思想的に知っちゃってますよね。中国はそのことさえ訳がわかない状態になってますし、そこが大国のエグいところではあるんですが。

 ただ、ユン・ソンニョルは僕、かなりのコリアン・クール、というか、ぶっちゃけジャパン・クールな大統領だと思うんですよ笑。ああいう戯画的なヘタレをやらかしちゃうんで。そういう意味では、東京はソウルからリベラルの発達段階を学ぶターンに来ている気もします。

 「マーロウ」については溜飲が下がった、っちゅうか笑、あれ一般的にはクソだと思われてて笑、僕、逆張りズムとかじゃなくて、マジで最高だと思うんですよね笑。それは音楽が単純にアメリカンクラーベみたいだし(それは凄いことなんですよね。映画史的にも、チャイナタウンとか、ロンググッドバイとかではなく「黒い罠」と直結してることになるんで)、ご説の通り、アイルランダーとヒスパニックを、明確に政治的(というか、植民地主義的に)繋ぐ線を引くというのは、やっぱ難しいですよ現代劇では特に。

 僕もチャンドラー読みではありませんが、チャンドラーが孤独死したのは、TVシリーズ第1作「構想の視覚」に出てくるサンディエゴのホッジス湖畔(メキシコ国境の近く)の高台にある高級住宅街です。コロンボは、驚くほどヒスパニック問題を扱わないです(それ以前に人種問題を扱わないので=実質がコナン・ドイルなので)、イタリア系設定であるコロンボがヒスパニックや東欧(ピーター・フォークの父親はロシア系のユダヤ人で、母親はいわゆるアシュケナズですが。それがコロンボの、東欧、特にルーマニアでの絶大な人気と関係あるかもしれないです)に見える構図になってるんですよね。

 そして、そんなコロンボの、シリーズ中最高にシリアスな回は、IRAの問題を扱うので(旧シリーズの最終回)、やはり優れた合衆国のエンタメというのは、人種的な補助線の引き具合だなと改めて思わざるを得ません。

 

No.11 6日前

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