菊地成孔(著者) のコメント

菊地成孔 菊地成孔
(著者)

>>19

 インポテンツ恐怖は、男性に根源的かつ普遍的で、幼少期からあるとします。フロイドは。ですが、フロイドも遠くなりにけりで、前にもここで書いた記憶がありますが、第一次大戦の余りの衝撃に、フロイドは「トラウマ」という自分の理論の根幹を下方修正しなければならなかったし、フロイド後のフロイド派も、他の学閥同様、主に時代性によって修正フロイド、再修正フロイド、という形でリレーしているので、インポテンツ恐怖も、個々人によって説得力が変わるのは当然のことですね。

 ガスは、どれほど充満しても、着火されない限り爆発はしません(ガス中毒。みたいな副次的なリスクはありますが)、なので、憧形や固着といった、時限のない欲望は、充満すれども爆発はしない、とした場合、インポテンツは時限性があり、かつ、憧形や固着のような、面的なものではなく、点的なもので、トリガー(着火)に相当すると、そういう見立てですね。

 僕自身は、幸か不幸か、恥ずかしながら齢59にしてまだ勃つので笑(それでも思春期よりは以下自粛)、インポテンツ恐怖も個人的リアルからはやや乖離してますが、プーチンのプロファイルや行動を見るに、的確であると断じました。これはプーチンに直接あって聞いたとしてもなお証明できないので笑(というか、フロイドは証明性が、極端に言うと無いので笑)、症状から逆算的に見立てるだけになりますが(フロイドは物証を揃えない探偵である、と批判されがちです)。

 ただ、この1往復で、お母様に対する感情が(それがテーマでは無いのに)浄化された、とするのであれば、それこそ極めてフロイド的なコミュニュケーションということになりますね笑。こういう時代ですから、遠隔地にいらっしゃるお母様との交情はテクノロジーによって、昭和よりはるかに緊密にできるでしょう。「親不孝」の心苦しさも、フロイドだったら欲望とするでしょう。浄化という快楽が用意されるので。つまり、親不孝はガスの充満で、この往復が着火になった、ということでしょうか笑。ありがとうございました。

No.21 33ヶ月前

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