菊地成孔(著者) のコメント

菊地成孔 菊地成孔
(著者)

>>15

 吃音(チックもですが)は、完全な発声障害(1音も声が出ない)に比べれば、生活に大きな支障はなく、195〜60年代の映画など見ると、吃音は「コミカルなキャラクター」として、差別もなく穏やかに登場して、俳優がわざと吃音を演じていたりしました(「裸の大将」こと山下画伯が吃音で、お茶の間の人気キャラクターだったこともあり)。現在でも、とチックの原因は、攻撃衝動の抑圧であるとされ、トラウマによる神経症の、スーパーライト版として、特熱な治療法、治療薬はなく、「なんとなく治ってゆけば良いね」といった扱いです(類似症状としての、赤面症や対人恐怖症等々と併せ、保険がきく精神神経科ではなく、集団クリニックみたいなもので緩和させる、という商売は、昭和では電車の車内吊り広告などでもよく見かけましたが、今はほとんど見ません)。

 暴力は開放系です、このコメント欄でも何度か言及しましたが、非常に大雑把に、人間は「閉じてしまって困る」か「開いてしまって困る」の、2ベクトルがあり、閉じてしまった患者には開放を、開いてしまった患者には囲い込み(閉じる)を目的に置きます。神経症のほとんどは前者であり、精神病のほとんどが後者となります。

 僕の家庭は、自己拘束を促す抑圧に満ち満ちていましたが、僕の街(店の商売から、ストリートまで)は開放が止められない、ある意味でおおらかな暴力の実行に満ち満ちていたので自然と治りました。厳密にいうと、最初期は暴力の横溢が僕の吃音を促し、暴力の横溢がそれを解消するというマッチポンプの様な事が生じたと思われます。暴力衝動の抑圧は、「誰かに暴力を振るいたい」といった具体的なものから、「世界が自分にフィットしない」という、特別IQが高い子供が抱く抑圧も含まれます。僕は大してIQ高くないので、そのタイプではありませんが。

 現代は暴力行為を日常的に目にする機会が減り、密室内や現て状況下でたまに目の当たりにすると、暴力行為が抑圧を促し、自閉を誘発するので、開放、緊張の緩和は、違った方法、状況によって歌唱されるしかないのですが、一番大切なことは、「気にしない」事ですね。気楽にいきましょう。家庭に病床があるなら、てっとりばやいのは家庭を出る事ですが、そうで出ない場合は、家庭内で状況を変えねばならず、特に未成年には難しいと思いますが、何れにせよ「気がつくと治っていた」というのが一般的だと思われます。

No.16 34ヶ月前

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