昨日聞いた、当国でのとある会話1 「君って、運動神経いいけどさ、昔、何かスポーツやってたの?」 「私が昔の頃、近所に住んでいた人に野球を教えてもらってたの。ルーベンっていうんだけど」 「へぇ」 「あだ名は、チノなんだけど(注:当国では縮れ毛のことをチノという)。それで、ルーベンがいないと野球用具がないから、その時はキックベースをしてたわ」 「そうなんだ」 「でも、ある日からパッタリ、ルーベン来なくなったの」 「そっかぁ」 「殺されたのね」 「え?」 「え?」 「殺されたの?」 「殺されたでしょ」 「へぇ」 昨日聞いた、当国でのとある会話2 「それで、村には一面のバニラ畑があって、村に到着するとブワッと匂いがすごいわけよ」 「へぇ」 「バニラって、虫が結構つくし、大変なの。作るのが」 「なるほど」 「あの絨毯みたいなバニラ畑……それで、その後、私のお祖父さんの時代に、ヨーロッパ人がやってきたわけ。彼らはバニラが欲しいから。それで、受粉の仕方を教えてくれて(以下、受粉の仕方説明)……そうして教えてくれて、みんな死んだの」 「死んだ?!」 「蚊とか、デングみたいな何かね」 「へぇ、そうですか……」 「でも、大半はね……殺されたの」 「え?」 「え?」 「殺されたんですか?」 「鍋の中に、お金を隠してた人も多かったわ」 「鍋の中!」 「でも、それも全部盗まれて……」 「そうなんですか」 「でも、まだ鍋の中に残ってるかも……」 「へぇ」 当国で、話のサゲは、ほぼ殺人。 その後、親戚と集まって話をしたのですが、近所の行きつけのタコス屋の旦那、 並びに、姪っ子の先生がCovid-19で亡くなっていました。 最近、死ぬ人が多くて困ってる、というのが話題の中心になりました。 教会も遂にシステム化され、教会に電話をかけると、ガイダンス音声が始まり、 死亡の方は1番、ミサの方は2番、洗礼の方は3番のボタンを押してください、とガイダンスが流れます。 ちなみに、どの番号を押しても、最終的には誰にも繋がりません。 親戚の家からの帰り道、真っ暗な大通りを走りました。 「暗いなぁ。この街、緊急事態宣言中じゃないよね?」 「治安が悪すぎるからでしょ……」 「……」 先日、サンペドロスーラ(ホンジュラス)の殺人率を抜いたらしいわが街は、野犬と自転車に乗る若者たちだけが、暗闇で弄り合っておりました。10年前は、普通の街でした。 (先日書きましたミイラカトリシズムは、当国での生活とバザンとエルサントからインスピレーションを得た造語です)
チャンネルに入会
フォロー
ビュロー菊地チャンネル
(ID:11887164)
昨日聞いた、当国でのとある会話1
「君って、運動神経いいけどさ、昔、何かスポーツやってたの?」
「私が昔の頃、近所に住んでいた人に野球を教えてもらってたの。ルーベンっていうんだけど」
「へぇ」
「あだ名は、チノなんだけど(注:当国では縮れ毛のことをチノという)。それで、ルーベンがいないと野球用具がないから、その時はキックベースをしてたわ」
「そうなんだ」
「でも、ある日からパッタリ、ルーベン来なくなったの」
「そっかぁ」
「殺されたのね」
「え?」
「え?」
「殺されたの?」
「殺されたでしょ」
「へぇ」
昨日聞いた、当国でのとある会話2
「それで、村には一面のバニラ畑があって、村に到着するとブワッと匂いがすごいわけよ」
「へぇ」
「バニラって、虫が結構つくし、大変なの。作るのが」
「なるほど」
「あの絨毯みたいなバニラ畑……それで、その後、私のお祖父さんの時代に、ヨーロッパ人がやってきたわけ。彼らはバニラが欲しいから。それで、受粉の仕方を教えてくれて(以下、受粉の仕方説明)……そうして教えてくれて、みんな死んだの」
「死んだ?!」
「蚊とか、デングみたいな何かね」
「へぇ、そうですか……」
「でも、大半はね……殺されたの」
「え?」
「え?」
「殺されたんですか?」
「鍋の中に、お金を隠してた人も多かったわ」
「鍋の中!」
「でも、それも全部盗まれて……」
「そうなんですか」
「でも、まだ鍋の中に残ってるかも……」
「へぇ」
当国で、話のサゲは、ほぼ殺人。
その後、親戚と集まって話をしたのですが、近所の行きつけのタコス屋の旦那、
並びに、姪っ子の先生がCovid-19で亡くなっていました。
最近、死ぬ人が多くて困ってる、というのが話題の中心になりました。
教会も遂にシステム化され、教会に電話をかけると、ガイダンス音声が始まり、
死亡の方は1番、ミサの方は2番、洗礼の方は3番のボタンを押してください、とガイダンスが流れます。
ちなみに、どの番号を押しても、最終的には誰にも繋がりません。
親戚の家からの帰り道、真っ暗な大通りを走りました。
「暗いなぁ。この街、緊急事態宣言中じゃないよね?」
「治安が悪すぎるからでしょ……」
「……」
先日、サンペドロスーラ(ホンジュラス)の殺人率を抜いたらしいわが街は、野犬と自転車に乗る若者たちだけが、暗闇で弄り合っておりました。10年前は、普通の街でした。
(先日書きましたミイラカトリシズムは、当国での生活とバザンとエルサントからインスピレーションを得た造語です)