私とODの生活にプレートが訪れた。新曲を作り、リハをやり、ワインを飲みにゆき、衣装を買いにゆき、インタビューを受け、それらをみんなインスタグラムにあげながら(それは全て、菊地くんの事務所、小田さんの自宅スタジオ、レンタルスタジオ、外のカフェ等々、我々が菊地くんと小田さんであることをネガティヴアピールしていた。特にこの倉庫跡は足がつきやすく、我々は静止画一枚も撮影していない)、週末ODは川崎の工場に帰る。月に一度、菊地くんと工場長を伴ったディナーに出かける。私はこのジョブに満足していた。秘匿された音楽家の暮らしである。私は変わらぬ悪夢に苦しんだり、過去の仕事の名残で、極端な緊張状態に陥ることはあったが、基本的には、平和で文化的な生活を謳歌していた(こう書くと、これをノヴェルだと思って読んでいる方が「いつかこの平和にも崩壊が」と云うフラグだと勘違いするといけないので念のため、この暮らしは、現在も続いている)。