■SNSの成熟の末に
本当に実践的な有料ブロマガで購読者数を伸ばす方法(夜間飛行 井之上達矢)
第13回 「なんちゃって生放送」のススメ
■SNSの成熟の末に
■SNSの成熟の末に
ツイッターのHOT!ワードのほとんどが「テレビ放映」と結びついたものであることは、以前から指摘されていました。『天空の城ラピュタ』の「バルス」はあまりにも有名ですが、ジブリアニメに限らず、サッカーの日本代表戦、WBC、ミュージックステーション、テラスハウスなどなどの高視聴率番組が放送されると、出演者の名前やコンテンツの内容についての書き込みが、HOT!ワードを独占します。最近は、この傾向がさらに強まっていると思います。
これは、SNSの普及が進み、その使い方が成熟した結果だと思います。
多くのユーザーはどうやら、ツイッターなどのSNSは、「オリジナルのコンテンツを作成+拡散」のために使うよりも、「優れたコンテンツをみんなで味わう」ために使うほうが、使い勝手がいいし、楽しめると考えている。
こうした傾向は、有料ブロマガ・メルマガ配信者にとっては、「チャンス」が来たと言えるでしょう。人々は、SNSそのもので完結してしまうのではなく、「何らかの優れたコンテンツ」をテコにして、人々がコミュニケーションをすることを求めている。もちろん「無料コンテンツ」は拡散しやすく、「有料の壁」が存在することには違いありませんが、「コンテンツとSNSの相互補完関係」が構築されてきている世の中というのは、有料ブロマガ・メルマガ配信者にとって「やりやすい世の中」だと言えると思います。
では、SNSで拡散され、みんなが「これはみんなで楽しむに足る優れたコンテンツだ」と考えるコンテンツとはどのようなものなのでしょうか。
■「生放送」の強さ
情報化社会において、キラーコンテンツとして、その地位を以前にも増して高めてきているのが「生放送」です。
次の瞬間に何が起こるのか、分からない。自分も含めて世界中の誰も知らない。
こうした性質は、人々の興味を惹きつけます。何年にもわたって極限にまで身体を鍛え、技術を磨いてきたアスリートが、全力でぶつかるスポーツ中継は、その最高峰ですが、ニコニコ動画やYoutubeで人気の「ゲーム実況」も、この流れに属するものだと思います。
スーパープレーでなくても、「次の瞬間」が分からない状況をみんなと共有したい。誰かがリアルに傷ついてしまったり、お金が動いたりすることのない、本当にたわいもないことであっても(例えば、ゲームで敵に自キャラが1基やられてしまったなど)、何か「事件」が起これば、それをみんなでツッコミたい。一時期流行した「ダダ漏れ」のように、「何をしてもいい」という状況だと、出演者が「人に見てもらうこと」に長けた人でないと、どうしてもだらけた時間ができてしまいます。それにひとつのコンテンツ自体が「長く」なる。しかし、「ゲームをする」という約束事があると、「やるべきこと」が提供されるので、「だらけ」を回避することができるだけでなく、ゲームの「切れ目」がコンテンツの「切れ目」になるので、長さもコントロールしやすくなる。
何年前の議論をしているんですか。そんなこと知ってます。だからニコニコ動画は「生放送」に力を入れてきたんでしょ。それに、有料ブロマガを始めるときに、ドワンゴの担当者から「購読者数を増やしたいのであれば、とにかく生放送をしてください」と言われて、耳にタコができているんで、マジでもうやめてください、と言う人も多いかと思います。
前置きが長くてすみません。私が今回の記事でお伝えしたいのは、「生放送をしよう」ということではありません。「生放送でないものも、生放送らしく配信すること」こそが、有料ブロマガ・メルマガ配信者の健康と経済的安定にとって重要だ、ということなのです。
はたしてそれはどういうことか。
■なぜ人はジブリアニメをテレビ番組放映中に見るのか
先日、ジブリアニメの『となりのトトロ』がテレビで放送されました。仕事中だった私はそれをツイッターで知ったのですが、その盛り上がりぶりに驚きました。「バルス」までいくと、それはある種のお約束で、実際にはアニメを見ていなくても、とりあえずツイートしておく、「祭りに乗る」という人が大量にいることが分かります。ただ、『となりのトトロ』の場合は、特に「祭りに乗る」というわけでもなく、あきらかにひとつのコンテンツとしてしっかりと視聴されていました。タイムラインからは、最初から最後までと言わずとも、かなりの長い時間をテレビの前で過ごし、その感想をSNSで共有して楽しんでいる人が相当数いることが感じ取れました(実際に、視聴率も20%近くあったようです)。
このアニメは14回のテレビ放送をしていますが、視聴率は20%前後でずっと安定しているようです。これは、ネット時代においても「優れたコンテンツ」は、「時間の取り合い競争」でSNSに負けるのではなくて、SNSで拡散される情報の「ネタ」になるだけだ、ということを証明していると思われます。
多くの視聴者にとって、「次の瞬間に何が起きるのか」がすべてわかっている。しかも、きっとかなりの割合の視聴者のテレビのハードディスクには、そのアニメのデータが入っていることでしょう(実際、帰宅後調べてみると私のハードディスクにも録画データが入っていました)。でも、1000万人近い人がとにもかくにもテレビ画面を見ている。この事実は、現代において「優れたコンテンツ」とは何かという問いへのヒントになると思います。
繰り返します。
コンテンツとして「生放送」は最強だと思います。「次に何が起こるのか分からない」というドキドキした状況と、実際に何かが起きてしまった時の感想は、多くの人が「共有したい」と思うものです。もちろん、「生放送」の中にも「多くの人の興味を引ける度合い」についての序列はありますが、基本的に強い。なぜ強いのかと言えば、「共有したい」と感じるポイントが多いからです。
そう考えると、コンテンツは「生放送」以外は通用しないのかと言えば、そんなことはないということが見えてきます。SNSが普及した時代において、コンテンツにとって大事なのは、みんなと「共有したい」と視聴者が思うポイントの多さです。「生放送」は、その制作過程の上で、自然とそういうポイントが多くなるものですが、必ずしも「生放送」でなくてもいい。
スゴい!でも、タメになる!でも、全然ダメじゃん!でも、わかる〜でも、なつかしーでも、どれでもいい。そうした「感想を共有したくなるコンテンツ」を提供すればいいのです。
■自分をリトマス試験紙に
ぜひ、過去に配信したコンテンツを見直してみてください。あらゆる意味で「うわ、なんだこりゃ」と、つい一人でツッコんでしまったら、それは「再配信」をする価値のあるコンテンツである可能性が高いと思います。
何が書いてあるのか、何が起こるのか、すべてを知っている「自分」が読んでも、何らかの感想が湧いてくるコンテンツ。そうしたコンテンツには、SNS上で爆発する可能性があります。
ぜひ「なんちゃって生放送」として、再配信してみてください。
一方、どんなにうまく書けていても、あるいは撮れていても、「まあ、うまくできてるね」くらいの感想しか湧いてこないようでしたら、そのコンテンツは倉庫にしまっておくことをオススメします。
「このコンテンツに接して、こんな感想を持った」ということを誰かに話したくなるコンテンツ。それをできるだけ多くの人が「共有しやすい/したくなる」形で提供する。それが、SNS全盛時代のコンテンツ配信の肝ではないかと思う次第です。
ご参考になれば幸いです。
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