第5回 「告知をするのが恥ずかしい」と思う方のために

■必要な「宣伝量」はどの程度なのか

有料ブロマガ・メルマガの会員を増やすには、著者自らによる宣伝が必要です。例外はありますが、1000人以上の購読者を獲得しているブロマガ・メルマガのほとんどが、SNSやブログなどで日々、積極的な告知をしています。

そんなこと知ってるよ! とおっしゃる人も多いでしょう。でも、どの程度の宣伝をすれば、「積極的な告知」に達するのかについては、甘く見積もっている方もいるのではないかと思います。

私が夜間飛行の事業で経験した例を挙げましょう。

夜間飛行では9月まで、ネットニュースの編集者としてご活躍されている中川淳一郎さんのメルマガを配信していました。6月から配信を開始して、9月末までに購読者数300人に達しない場合は休刊という条件を付けて始めたのですが、残念ながら目標に達することはできませんでした(あと1カ月半あれば十分に達成できたペースでしたので、私としては後悔しています)。この中川さんのメルマガは、購読者からは非常に好評で、3ヶ月間のあいだに「解約」をした人は1桁に留まりました。解約がほとんど無いのに、数字を伸ばせなかったということは、つまり告知が足りなかったわけです。中川さんは、毎週メルマガが配信されるごとに丁寧に「今号の読みどころ」をツイートしていましたし、夜間飛行公式アカウントからのツイートについてもRTしてくださいました。中川さんは普段から連ツイする方ではありませんので、一つ一つのツイートはかなりの重みを持っていたと思います。しかし、メルマガ休刊が決まってから、複数の中川さんのフォロワーさんから、「中川さんのメルマガが配信されていたなんて知らなかった」というコメントをもらうことになってしまいました。

まあ、この件については、「そんなレベルじゃダメに決まっているよ」と思われる方も多いでしょう。

もう1つの例は、少しは驚いていただけるかもしれません。先日、とある若手IT企業の社長さんと会食をしたのですが、その方は津田大介さんがブロマガ・メルマガを配信していることを知りませんでした。もちろん津田さんのことは知っていましたし、ご自身でツイッターもフェイスブックもブログも利用している方です。でも、津田さんのメルマガの存在は知らなかった。お約束の「宣伝RTウザいですよねw」という話をする以前に、津田マガというコンテンツがこの世の中に存在していることを認識していなかったのです。その方は、津田マガの存在を知ると、「それは読まなきゃダメでしょう」とその場で申し込みを済ませました。すみません、そこは夜間飛行から購読していただきましたww

このような例を見ると、フォロワー数27万の津田大介さんの宣伝RT爆撃も、まだまだ「十分」とは言えないわけです。言い換えれば、有料ブロマガ・メルマガに「十分な宣伝」など無いとも言えます。ブロマガの宣伝というのは、記事が配信されようとされなかろうと、日々、粘り強く徹底的に続けなければならないものなのです。

しかし、「そんなことはできない」という人がいます。理由はさまざまあると思います。忙しくて宣伝なんてしている暇がない、ツイートのクオリティを保ちたいので告知はしたくない……などなど。しかし、多くのブロマガ・メルマガの著者さんの様子を見ていると、告知が不十分になってしまう最大の理由は、どうやら「恥ずかしいから」ではないかと私は思っています。

■なぜブロマガ・メルマガの告知は恥ずかしいのか

「恥ずかしい」と感じるのも、さまざまな理由があります。

有料ブロマガ・メルマガの宣伝は、どうしても「お金を払ってください」という要素が入り込むことになります。「とにかく記事を読んでほしい」という気持ちが99%だったとしても、1%はお金の問題が入ってしまう。すると、そうしたことは声を大にして世間様に叫ぶことではない、という感覚を持つ方もいるでしょう。それはわかります。しかし、書籍やDVDあるいはカレンダーや手帳については、それほど抵抗が無いけれども、有料ブロマガ・メルマガについては抵抗がある、という方も多いようです。

このような感覚を持っている方は、宣伝面だけでなく、内容面でも、購読者の伸び悩みにつながる問題を抱えていると私は思います。

どういうことか。

書籍やその他のコンテンツについては宣伝できるけれども、有料ブロマガについての宣伝に恥ずかしさを感じるという方は、有料ブロマガのコンテンツと「自分自身」が必要以上に近づいてしまっている可能性があります。

この連載の第一回で、「読者との距離感を詰める」ことの効用について書かせていただきました。
http://ch.nicovideo.jp/blopro/blomaga/ar269670

ここで重要だと書いたのは、あくまで「コンテンツと読者」の距離を近づけることであって、「書き手である自分とコンテンツ」の距離を必要以上に近づけることではありません。書籍やDVDであれば、コンテンツができあがる過程で、編集者やプロデューサー、営業担当者などさまざまなスタッフが入り込みます。それらのいわゆる「不純物」が、「自分とコンテンツ」の距離感を適正なものに調整してくれます。そのコンテンツは確かに自分の作ったものだし、その内容には責任もある。そのコンテンツは自分にとって大事なものだけれども、「コンテンツ=自分自身」ではない。そういう感覚に落ち着きやすい。

これは非常に大事なことです。

「俺自身がすごいんだから金を払え!」というのと、「俺自身はすごい奴なのかどうかはわからないけれども、とにかく何だかすごいのができてしまった気がするから、お金を払ってでも読んでね」というのは、大きな開きがあります。


■「自分」と「自分の書いた記事」の間に適度な距離を作る

堀江貴文さんや津田大介さんが自身のブロマガや書籍について、徹底的に宣伝ができるのは、実は「俺」と「コンテンツ」が適度な距離を保てているからだと思います。

自分が宣伝しているのは「自分自身」ではなくて、「自分から生み出された、自分とは違う何か」だと考えているからこそ、徹底的な告知をしても「恥ずかしくない」し、批判されたとしても「スルー」できる。

ブロマガやメルマガは、著者ご自身の思想や活動をネタに制作していることが多いので、この「適度な距離」を掴むのが難しいメディアだとも言えます。しかし、その距離を掴めた方は、「書けること」が広がるので内容面でも充実し、宣伝面でも思い切りが良くなるとはずですので、ぜひ今一度意識してみてはいかがでしょうか。

読者の読みたい日記は、あなたの「本当の日記」とは違うはずです。
読者の知りたい情報は、あなた自身のことではなくて、あなたの生み出したコンテンツについての情報である可能性が高いはずです。

ご参考になれば幸いです。