名を正す のコメント

安保法制の説明であげられた、日本人救出の米艦を防護、ホルムズ海峡機雷除去など、当初掲げた大義名分は次々と政府自身によって否定されることになりましたが、当然です。最初から、政府の狙いは中国に対抗することにあったからです。法案審議の後半は、露骨に中国の名前をあげて、その脅威を煽り、本音を現しました。
確かに政府は、そして多くの国民も中国の脅威を意識しています。しかし、その脅威の中身は、単なる軍事的脅威ではなく、実はかなり根深い屈折したもので、それは歴史的に醸成されてきた国民の根底にある隠れた複雑な意識です。

会田雄次という歴史学者(故人、元京大教授)が顔をしかめて語った言葉があります。「隣に中国というどうしようもない大国があり、歴史的にずっと日本人は劣等感を感じてきた」。少し世界史を学んだことがあれば、日本が中国からあらゆる分野で学び、文物や制度、そして文字まで一方的に受け入れてきたと言うことは自明のことです。
日本が中国を凌駕できたと思えたのは、明治以降の100年ぐらいの間です。それも、中国文明から西洋文明にいち早く「乗り換えた」結果です。やっと、長年劣等感を感じてきた相手より上位に立てると思えたのに、今また中国が列強の支配から脱して元の大国に戻りつつあること、これこそが日本人の根底にある本当の危機感、中国に対する脅威の本質です。日本人が中国に対して感じる脅威は、単純なものではありません。アメリカの、韓国の、東南アジアの、日本以外の国々が感じる中国に対する脅威の意識は、日本のそれとは質が違うのです。

この思いは、特に高度成長を生きて来た団塊の世代以上の、特に男性に多いようです。石原慎太郎などはその代表です。彼の中国(彼は支那と言いますが)に対する言動は、まさに劣等感の裏返しです。秀吉に見られる、大陸に対する劣等感と憧れ、まずこの病の自覚から始めなければならないでしょう。根は深いのです。日本は日本の良さや優位性を知ること、大陸国家である中国に妙なライバル心を燃やして、背伸びする必要などないのです。まして、中国に対するのに、アメリカの虎の威を借るなどは、ますます日本人の自尊心を傷つける結果になります。

No.6 108ヶ月前

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