na85 のコメント

 NHKでやっていたトマ・ピケティの「パリ白熱教室」を視て思いました。ピケティの格差の原因についての分析は大変素晴らしいものがあったのですが、その解決法が大企業や富裕層への税(所得税・相続税・資産税)の累進性強化だというのは、このグローバル化した経済環境においては現実味に欠けるように思いました。よしりん先生もブログで「ナンセンスだ」と断じておられましたが、私もその通りだという感想を持ちました。
 というのも、グローバル展開する大企業はモノづくり企業であれ金融に特化した企業であれ、海外の関連子会社からの配当を益金に算入しないといった課税ベースを抑える様々な避税テクニックがあり、さらに各国の優遇税制およびタックスヘイブン(租税回避地)などのあらゆる手段を用いて避税しており、そうやって出した利益の多くを株主(富裕層)への配当に充てているからです。こンな状態では、既得権者たる富裕層に累進課税などできるわけがないのです。
 解決法としては、各国が国内法を改正したり国際協調して条約を改正したりして、国家の政治・経済・社会・文化における制度的な壁を高くしていくしかないわけですが、これも一筋縄ではいきません。独裁国家であろうと民主制を採用する国家であろうと、グローバル企業が政府と癒着し、実質的に政府を操っている状態であるため、国内法も国際法も改正されるどころか、FTA・EPA・NAFTA・TPPといった独占・格差促進条約みたいなものが次々と締結されていきます。
 何故このような事態を改められないかを考えると、国家としての歴史が浅かったり、多民族国家であったり、人工国家であったりして健全なナショナリズムが育ちにくいことが問題だと思われます。例えば米国では、1%の富裕層が99%の貧困層のために公的な医療保険制度をつくることには絶対に反対します。病気一つしたら破産の憂き目に遭う米国の絶望的な医療制度を改めるべくオバマケアが導入されましたが、これは結局フードスタンプの医療版でしかなく、患者のさらなる貧困化と連邦政府の財政悪化、製薬企業や保険企業の株価上昇、ウオール街の投資家の利益拡大に帰結したようです。
 これに対して日本は、歴史の長い単一民族による国家であるため、富裕層が払った税金で貧困層の医療を担保する健康保険があったり、都市住民が払った税金で地域のインフラ整備や産業活性化に回されたりしてもほとんど文句は出ません。これは天皇を戴く日本人の公の精神であり、我が国の健全なナショナリズムの発露の一つでした。世界各国の国民は、グローバル企業や富裕層のエゴを抑える智恵として、日本の健全なナショナリズムから学ばねばならないのではないかと考えます。
 しかし日本は、敗戦後ときが経つにつれて外交における主権放棄状態の放置が重くのしかかり、徐々に構造改革を受け入れる方向に進んできました。現在では日本の歴史的遺産の全てを放擲するTPPという不平等条約をむしろ積極的に妥結させようと躍起になるほど病状は悪化しています。さらにアベノミクスという格差拡大・貧困化促進政策も同時進行しており、これによる不満の捌け口として排外的な悪性ナショナリズムを鼓舞するようなパフォーマンスが為政者から日々繰り出されています。
 世界の範となるべき日本が健全なナショナリズム(国民主義)を復興するためには、まず日本が国民国家となる過程としての幕末~明治までの歴史を知らねばなりません。その試みが『大東亜論』です。また日本人が公民であるため精神的支柱としてきた存在を知らねばなりません。それが『天皇論』シリーズです。そして日本人の頭を抑えつけてきた精神的な敗北感を払拭せねばなりません。それが『戦争論』シリーズや『パール真論』です。さらに付和雷同して空気に染まる日本人の特性を十分考慮した上で現在進行形の危機に備えるべく出されたものが『新戦争論』シリーズでしょう。『反TPP論』や『脱原発論』は国防のために欠かせない個別的処方箋ですが、副次的な意味で貧困対策にもなっています。

 ゴー宣スペシャルの有機的なつながりにシナリオ的なものを感じます na85

No.123 119ヶ月前

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