magome のコメント

na85さんの >>150 での最後の一言

「庶民を武士の意識に引き上げた明治維新は時代がもたらした不幸だった」

の書き込みに感化されて一つ書物を紹介したいと思います。
実は、このまえ神田の三省堂に本を買いに行ったところ、相変わらず「里山資本主義」が店頭に積まれて、ベストセラーを維持し続けていることが目に止まり、さらに渡辺京二 著 「逝きし世の面影」も同じく積まれていたのが印象的でした。そして、もう一つ、渡辺京二 著の本でベストセラー扱いされいた本があります。それは「近代の呪い」というものでした。

これは作者である渡辺京二の講演録であり、内容は非常に簡素ですが、近代の歴史、成り立ちとこれからについて解りやすく、かつ奥深く述べていますのでゴー宣でも重要な課題となる「近代」について興味がある方には何かしらの助言となるのではと思います。

まず、私が最も印象に残った内容として

近代は世界市場(スペイン、ポルトガルが始めた中南米の植民地経営)の完全定着とフランス革命によって誕生した議会政治によって誕生した。

スペインやポルトガルが行った中南米支配がはじまった時代を「アーリィ・モダン(前期近代?)」であり、フランス革命による議会政治誕生が「プロパー・モダン(後期近代?)」とされています。そこで、近代化の特徴として掲げられているのが

1.自律的民衆世界の解体(個人、小規模団体の政府からの自立性の解体)
2.各個人の政府による直接監視、直接関与
3.各個人の国政への直接参加

というものでした。そもそも、フランス革命時代のフランスでも明治維新前の日本でも国が戦争していたとしてもそれは政府(王、幕府)お抱えの軍隊同士が争うというもので欧州でも交戦国同士でも庶民は国を自由に行き渡ることが出来ましたし、馬関戦争でも欧米軍を長州の民衆が砲弾運びなどの補助をしていた記録が残っています。これは会津戦争でも会津の庶民が官軍の補助をしていたのと同じだということです。
 要するに、近代国家が成立するまではどこの国も職業や自治体に幕府や王、あるいは皇室から特権や権限を与えられ、転職や移動はそれら自治体や自治性が強い職業団体に入る事でもあったということです。これは武士でも同じです。その変わり、国のいく末は王や幕府に任せ、必要以上の干渉はしないということでもあったわけです。よって、近年叫ばれている愛国心は近代軍の徴兵制と同じく、近代国家の成立時に作られたものであって、近代国家成立時に国土を強化する一種の都合でもあったというわけです。
 そもそも、フランス革命というのは英国との戦争に敗れた上に米国独立支援による資金難から立ち直るために統一市場、統一通貨、税率の均一化を試みようとして失敗し、貴族および、各職種による中間団体の解体と均一的かつ統一的な行政国家にしようとしたところ、貴族及び農民を含む職種団体や民衆の反対に遭って始まったものと、本書に記されています。ここで革命後に王政が廃止されたのは民衆が王室の根も葉もない誹謗中傷記事を信じ込んだことと、これを民衆が暴動に移したことが原因だということです。
 中間団体が解体したことにより議会に参加する資格が整ったものの、革命の影響で恐怖政治とかつてない200万人という大規模虐殺が史上初めて誕生したこと、そして対外戦争で徴兵制と忠誠愛国を強いる事とする近代軍の創設が可能となり、この結果、ナポレオンの活躍により圧倒的な強さを見せつけた結果、各国も近代の証として徴兵制と中世愛国を元に近代軍を成立させていきます。
 そして、産業革命による後期近代における資本主義の誕生も整い、その結果
1.すべての人工化(化学肥料や化学物資の普及による自然との隔離)
2.世界経済への完全移譲と経済摩擦などによる国家間の対立激化

というものでした。この結果、政府とは業務上、関係のない庶民が原料がどこで作られたのかわからない、工場で大量生産されて輸送された安い加工食品を食べながら、株や為替に気軽に参入できる環境にあり、そして遠く離れた僻地の島である竹島や北方領土、そして尖閣諸島の行く末に関心を示し、会ったこともないか、呈して親しくもない人が書いたか、誰が書いたのかわからない情報を基に、会ったこともない支那人や朝鮮人、韓国人に反発を抱いて嫌韓、嫌中運動に身を注ぐというわけです。
そして、ひとたび暴動が起れば文革やクメール・ルージュのような大量虐殺が科学技術の関係なく出来てしまうという危険が常に潜んでいるというわけです

これが近代の呪いであり、近代はグローバルとおなじく、西洋化を意味し、現在では中国の主席や高官も人民服ではなく、西洋のスーツを着ていることから、世界における近代は進む所まで進み、今後は自然の保持に向けて科学技術を発展させ、GDPも昭和40年代にまで戻していく方法でやってはどうか、本書では結論付けています。
国の近代化が産業と行政で整った19世紀から、それまで1000年間変わらなかったGDPが急成長したことから、近代化は人間が通る道として必然であったと認めつつも、結局は近代化を成し遂げた国は里山資本主義へと向かわなければならないのだと、本書を読んで思いました。

近代について疑問をだいたら、「近代の呪い」を一読してみては如何でありましょう?

No.154 126ヶ月前

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