na85 のコメント

 magomeさんと目隠しさんが面白い対話を続けておられるので混ざりたくなりました。割と今日は暇なので。

 日本の江戸期までの特に庶民の性はポリネシア的なあけっぴろげだったと思います。春画に描かれているのを見ると成人女性が未成年男子を誘惑したり、子供の近くでも気づかず交わってたりは実際に起こりえたわけです。雪隠を覗く変態行為の春画もあります。
 武士の子が藩校などで主君と親を大事にしろと朱子学的な忠孝を習っていたとき、町人の子は寺子屋で心で思ったまま実行しなさいと陽明学的な良知や知行合一を習ったはずです。心に浮かんだことが良いことか悪いことかの判断基準は江戸しぐさ・繁盛しぐさとしてこれも寺子屋で習いました。この江戸しぐさは陽明学の日本的展開です。江戸庶民は長屋で生活しながら寺子屋や江戸講で教えを受け、職場や取引先という世間の中で生きるという幾層にも重なった複数の共同体の成員だったはずで、こうした中で性のスタンダード・オーソドックスやタブーも学んでいく機会は多かったと思います。つまり性についても、格好の悪いこと(ド外れた変態行為)や野暮なこと(しつこいセクハラやストーカー)は世間での生きにくさにつながるから淘汰されていったはずです。江戸期の町人社会は女性に主導権があったはずですから、女性がTPOに応じて許容する範囲までだったのではないでしょうか。村落共同体の農民でもこれに準じた性意識だったはずです。
 問題は明治期からです。列強への対応から国民皆兵とするため四民平等で意識を武士に引き上げる必要がありました。忠で上官に従うようにし、孝で親を大事にして家(銃後)を守るようにしたわけです。家制度のための民法も整備されました。江戸期の武士の結婚は家格によって決まっていました。会社などの職場が武士的になれば様々なランクによって結婚が規制されていったと思われます。その上に日本を一等国に見せるためキリスト教的倫理観を導入しました。明治武士道の旗手、新渡戸稲造も内村鑑三もキリスト者です。朱子学的な武士道の徳目とキリスト教倫理の共通性を主張して欧米に日本の文明度を示し、これを国民に普及させました。こうして日本女子は慎み深くなり、日本男子は謹厳実直になりました。そしてタブー化された性は社会の裏側に潜伏しました。といっても共同体はまだまだ健全でしたから、各共同体の先輩たちから知識と実践とタブーを教わっていたはずです。さらに時代が下って核家族化と共同体崩壊が同時に進行した現代日本では、一般社会においては性はタブーとなり、人々は老若男女関わらずマスコミが一方的に垂れ流す西欧的な恋愛スタンダードと歪んだ性知識を受け取るのみです。

 やはりもう一度文化的にも鎖国したい na85

No.94 136ヶ月前

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