リカオン のコメント

自分は動物関係の仕事をしているため、動物の相談を電話で受ける事が多いです。動物に対する考え方が変化して来ているのを感じましたのでそれについて書きます。

野生の冬鳥として地元に渡ってきたハクチョウが事故で片羽を骨折して飛べなくなっていました。飛来地では冬の間ハクチョウたちに不足がちな餌をボランティアが撒いて与えていたので、骨折したハクチョウも飢えることなく冬を越す事ができました。

いよいよ北帰行の日がやって来ました。仲間たちはシベリアなどに帰って行きますが骨折した個体は日本に留まるしかありません。ポツンと一羽残されたハクチョウにボランティアが毎日餌を与えていました。

私は動物関連の仕事をしていたので、このかわいそうなハクチョウをなんとか助けてくれと色々な人から電話相談を受けました。

世話をして欲しいとか
(そう思う貴方がお世話したらいいのでは?すでに地元のボランティアが餌を与えているので問題ない。)

シベリアの仲間の所に届けてあげられないのか
(日本の面積より広いシベリアの何万といるハクチョウの中でどこに仲間がいるのか分からないだろう。その調査は誰がして、誰が費用を出すのか?)

空輸してあげたらいいのでは
(その航空運賃を誰が出すのか?よしんばシベリアに送り届けても今度冬になったら他個体が暖かい南に移動できるのに飛べないこの個体は極寒のシベリアに耐えられず凍死か飢え死にするだろう。暖かい春から秋を日本で過ごし、次の冬に仲間が渡って来るのを待つのがこのハクチョウにとって一番良いのではないか)

と、以上()内の説明をしたのですが、中には納得されない相談者もいて、「このハクチョウにはまだ物語があるんです!この個体のつがいのハクチョウは一度仲間と一緒に飛び立ったのですが、すぐに引き返して来て飛べないハクチョウの元に寄り添っていたのです。そして次の日に諦めて飛んで行ったのです。」
そう言われて同情をしないのかと迫られましたが、私の回答は日本でボランティアの世話を受けて仲間を待つというのが最善策と繰り返したところ電話を切られてしまいました。

私が疑問に思ったのはこのハクチョウよりももっとかわいそうな人間は日本にも世界にもあふれていて、その人に対してこの方はこれほど同情を寄せ、なんとかしてあげたいと思っているのか。また、ハクチョウ以外にもかわいそうな野生動物はいっぱいいて、日々骨折したり天敵に襲われたりして死んで行っている事についても、それは自然の摂理と納得するはずなのですが、これほどまでに反応するのだろうか。たまたま新聞やTVラジオなどに取り上げられた情報にだけ同情しているようにしか見えません。またこの方は餌を与えているボランティアのような当事者ではなく、いつも前の道路を通過している通勤の方でした。

電話の声から判断して、30代くらいの分別もあるはずの男性に聞こえました。また高齢の男性からもこの手の相談が増えてきており、動物権の拡大を感じております。

No.201 9ヶ月前

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