6月には新ドルにきりかわると歌いまくっていたヒトビトもいたが、何も起きなかった。 今回のBRICS会合でBRICS共通通貨ができると踊りまくっていたヒトビトもいたが、 例:https://ch.nicovideo.jp/magosaki/blomaga/ar2161632/19 「号令倒れ」(朝日新聞記事の表現)だった。ヒトビトはまんまと踊らされたということだ。 ふつうは、なんで?と反省するのだろうが、反省というのはヒトビトにもっとも似合わないことばであった。 しばらく前にナチさんが、同盟というのは主権の委譲であり、また同盟国の間には上下関係が生まれるという趣旨を言っていたが、これは同盟の一側面を確かにあらわしている。通貨同盟も同じだ。そして通貨発行権は主権のなかでももっとも重要なもののひとつだ。共通通貨で成功したのはユーロだが、ユーロを発行し維持するために、欧州はもともとかなり共通の政治的文化的土台がある上に、さらなる統合のために努力を続けている。しかしBRICSにはそのような土台も努力もない。 インドがルピーを発行する主権を中共に委譲するかと考えてみれば良い。少なくともその「前に」中共はインドとの軍事紛争を終わらさなければなるまいが、とうていありえないだろう。 この件では中心人物と目されるルラも、上述朝日新聞の記事では、共通通貨の主張は、「ルラにとって支持母体への受けがいい。ブラジルの存在感を示すためにも、共通通貨という主張はわかりやすい」が、「実現可能性についてはルラも、あまり現実的には考えていない。そもそも共通通貨がブラジルにとってどれほどの恩恵があるのかわからない」という趣旨を専門家に看破されている。 ドルは別にドルを共通通貨にするという通貨同盟があって今のようになったのではない。それはデファクトスタンダードなのだ。つまり、世界市場の通貨競争のなかで、「ドルが良いわけではないが、それでも他の通貨よりは」利便性が高いから支持されてきたのである。ウインドウズはいろいろ気に障るOSだし、勝手に改悪するが、それでもたとえばubuntuを万人が使うかというとそうではない。ドルもウインドウズも、別に使えと強制してくるわけではない。使いたくなければ使わなくてもいいのだ。いくらドルやウインドウズが悪いと言ってみても、他が良いかどうかは別に考えなければならないという、いつものわたしの論理がまた繰り返される。(なお、わたしはウインドウズからSSHでubuntuを良く使っている。そういうことができやすい環境がこの十年来くらいか、整ってきている。共通通貨も現実的にはまずはそのあたりをめざすべきだろう)。 結局のところ、今回記事の最後のあたりにある専門家の予想があたるだろう。つまり、「多くの人が金本位制に戻りたくない」「ドルに代わる通貨を見つける上で、BRICSは現地通貨の利用拡大を推進する可能性が高い」というあたりだ。 この「現地通貨」という点、現在ロシアと中共との間では人民元が多く使われているが、その人民元をロシアがどう扱っているかは、さきごろわたしが引用した朝鮮日報に書いてあったとおりだ。「現地通貨の利用拡大」すら、先は遠い。 ドル覇権を今すぐ根本的に覆すには、大戦争をしかけて、中露が勝ち、米国が決定的に没落するくらいしかあるまい。なにがなんでも反米至上主義なヒトビトは実際にはこれしかないとわかっているから、ウクライナにしても台湾海峡にしても、戦争推進大好きな戦争勢力になってしまっているのだろう。
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6月には新ドルにきりかわると歌いまくっていたヒトビトもいたが、何も起きなかった。
今回のBRICS会合でBRICS共通通貨ができると踊りまくっていたヒトビトもいたが、
例:https://ch.nicovideo.jp/magosaki/blomaga/ar2161632/19
「号令倒れ」(朝日新聞記事の表現)だった。ヒトビトはまんまと踊らされたということだ。
ふつうは、なんで?と反省するのだろうが、反省というのはヒトビトにもっとも似合わないことばであった。
しばらく前にナチさんが、同盟というのは主権の委譲であり、また同盟国の間には上下関係が生まれるという趣旨を言っていたが、これは同盟の一側面を確かにあらわしている。通貨同盟も同じだ。そして通貨発行権は主権のなかでももっとも重要なもののひとつだ。共通通貨で成功したのはユーロだが、ユーロを発行し維持するために、欧州はもともとかなり共通の政治的文化的土台がある上に、さらなる統合のために努力を続けている。しかしBRICSにはそのような土台も努力もない。
インドがルピーを発行する主権を中共に委譲するかと考えてみれば良い。少なくともその「前に」中共はインドとの軍事紛争を終わらさなければなるまいが、とうていありえないだろう。
この件では中心人物と目されるルラも、上述朝日新聞の記事では、共通通貨の主張は、「ルラにとって支持母体への受けがいい。ブラジルの存在感を示すためにも、共通通貨という主張はわかりやすい」が、「実現可能性についてはルラも、あまり現実的には考えていない。そもそも共通通貨がブラジルにとってどれほどの恩恵があるのかわからない」という趣旨を専門家に看破されている。
ドルは別にドルを共通通貨にするという通貨同盟があって今のようになったのではない。それはデファクトスタンダードなのだ。つまり、世界市場の通貨競争のなかで、「ドルが良いわけではないが、それでも他の通貨よりは」利便性が高いから支持されてきたのである。ウインドウズはいろいろ気に障るOSだし、勝手に改悪するが、それでもたとえばubuntuを万人が使うかというとそうではない。ドルもウインドウズも、別に使えと強制してくるわけではない。使いたくなければ使わなくてもいいのだ。いくらドルやウインドウズが悪いと言ってみても、他が良いかどうかは別に考えなければならないという、いつものわたしの論理がまた繰り返される。(なお、わたしはウインドウズからSSHでubuntuを良く使っている。そういうことができやすい環境がこの十年来くらいか、整ってきている。共通通貨も現実的にはまずはそのあたりをめざすべきだろう)。
結局のところ、今回記事の最後のあたりにある専門家の予想があたるだろう。つまり、「多くの人が金本位制に戻りたくない」「ドルに代わる通貨を見つける上で、BRICSは現地通貨の利用拡大を推進する可能性が高い」というあたりだ。
この「現地通貨」という点、現在ロシアと中共との間では人民元が多く使われているが、その人民元をロシアがどう扱っているかは、さきごろわたしが引用した朝鮮日報に書いてあったとおりだ。「現地通貨の利用拡大」すら、先は遠い。
ドル覇権を今すぐ根本的に覆すには、大戦争をしかけて、中露が勝ち、米国が決定的に没落するくらいしかあるまい。なにがなんでも反米至上主義なヒトビトは実際にはこれしかないとわかっているから、ウクライナにしても台湾海峡にしても、戦争推進大好きな戦争勢力になってしまっているのだろう。