菊地成孔(著者) のコメント

菊地成孔 菊地成孔
(著者)

>>20

 いえいえ、大変理解の深いコメントで嬉しいです。「ミッシェル」は、Fmの曲で、冒頭がF7、すなわち二次ケーデンスのI7ですよね?あれ凄いですね。あれこそクラシックです。「インマイライフ」の「パッシングディミニッシュからの転回形」とか、マッカートニーが楽譜読めないというのは、「音楽は教育じゃない。感性である」という、凡才が言うと恥ずかしいクリシェでも、マッカートニーのような真の天才が言うなら納得。と言う感じです。

 コードが密集して、織物のように、流体のように流れ続ける。と言うのは、言い換えればヨーロッパの強迫観念です。クールと言う概念は、どうせ何がしかの強迫観念からは逃れられないんだ人間は、と言う立場を前提に、強迫的である部分を、可能な限り外して、冷たくあしらうことであって、ジャズは、モードジャズでなく、トーナリティーが高いものでさえ、コードはポツンポツンと置いてゆきますよね。

 エナジーフローは、と言うか坂本龍一の曲は、和声の建築感が半端なく、かつ居心地も良いのでクールだと思います。しかし、その大坂本でさえ、アコピを弾くと、ものすげえロマンチックに揺れるし笑、表情もセックスしてるみたいになるので笑、やあっぱ出目は出目だよなあ、と思います。小田朋美さんと「花と水」をやった時、4小節おきに、タイムがたっぷり溜まるので「クリック聞いてるつもりでやってください」と言ったことがあります。渋谷慶一郎さんとやった時も、ロマンチックな曲は死ぬほどやりずらかったです笑。「なんで周期的にスローモーションになってセックスする顔になるの?笑」といつも思ってます。グルーヴの定義は「どんなに遅くなっても溶けない」と言うことがあると思います。クラシックの人はバラーがみんなとろとろになっちゃって、「物凄くゆっくり踊る」と言うことが出来ないです。

 僕がバンドに芸大クラシックと(象徴的に)バークリージャズを一緒に入れるのは、常にカルチャーショックが起こって、彼らがいつでも、10年以上経ってもフレッシュな気持ちになるからです。フレッシュでいる限り、人間は自滅しません。


 

No.22 55ヶ月前

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