りゃん のコメント

リチャード・ハースの議論は、「核拡散は様々な理由によって防止できないから管理できるだけだ」という考え方である。この考え方を北朝鮮の核にも適用しようというわけである。

核拡散が防止できない理由の一つに、核兵器は威信のためではなく安全保障のためであるという点もあげいている。
ウクライナのナショナリストが核兵器を手放さなければ、ウクライナはロシアからの侵略を防止できていたかもしれないことをおもうと、この議論は部分的には強い説得力がある。

ただし、ハースの議論は(あたりまえだが)米国視点の議論であることに注意が必要である。「管理」の定義を明らかにしていないが、

「当該国、たとえば北朝鮮が核兵器を持つことを容認するが、米国には核兵器が届かないようにする」

が多分「管理」の定義の中核であろう。そうであれば、孫崎さんは「私達は少なくともこうした見解が存在することを認識しておかねばならない」と述べているけれど、わたしたちにはむしろずっと前から馴染み深い議論である。日本人の多くは、「最終的には米国はそういう政策をとるのではないか」と疑っている。

その一方で、北朝鮮はあくまでも米国に届く核兵器開発をあきらめていないようにみえる。その場合はハースの議論の射程外であると考えることができ、そうであれば、北朝鮮への武力行使とハースの議論とは矛盾対立するものではないであろう。

なお、ハースの議論が世界的に適用されたらどういう世界になるだろうか。北朝鮮が核武装するなら日本も結局することになるだろう。日本には核武装を米国は許さないという議論もあるが、北朝鮮も米国と戦争した相手である。
そして最終的には、米国には(中露英仏からの核を除き)核は届かないのだから、米国の安全は直接的には今と変わらない。しかし、(中露英仏はおいておくとして)それ以外の全世界は今よりも安全ではなくなる。

No.6 59ヶ月前

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