アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門メールマガジン

アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第75号(2015/10/9号/月2回発行)

2015/10/12 20:55 投稿

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  • りょっぴー
  • 心が叫びたがってるんだ。
  • マングローブ
  • 虐殺器官
  • GANGSTA.

 連休中でもちょっと仕事が立て込んでおり、メルマガの発行がいつもより遅れてしまいました。申し訳ありませんでした。
 今回の不定期アニメ日記では、某社の倒産を機に、経営について取材を通じて考えたことを書いてみました。
 では、いってみましょうか。

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 『超人幻想 神化三六年』(會川昇、早川書房)
 10月放送開始アニメ「コンクリート・レボルティオ」の前日譚
人間以上の力をもつ〈超人〉が存在する神化36年の日本は戦後復興にわいていた。テレビ視聴者が増えるなか、ディレクターの木更嘉津馬が担当する生放送人形劇の開始直前、スタジオに元GHQの男らが乱入し、謎の獣が現われスタッフを惨殺。その様子がお茶の間に流れると思ったそのとき、気づくと嘉津馬は放送開始40分前に戻っていた――アニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」の前日譚にしてもう一つの昭和史
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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.前回のアニメの門チャンネル
 「『心が叫びたがってるんだ。』を語りたがってるんだ。」
4.不定期アニメ日記「制作会社マングローブが倒産」



最近のお仕事紹介

1.朝カル講座「アニメを読む」(東京)
 10月以降は次のラインナップです。
  10/17 『機動戦士Vガンダム』
  11/21 『ゴルゴ13』
  12/19 現代アニメのターニング・ポイント ポスト『涼宮ハルヒの憂鬱』の10年間
 https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/25963ded-7f56-7c17-5f4f-559a10b99a70

2.NHK文化センター青山教室「アニメを読む」  10月から新たにNHK文化センター青山教室で講座を担当することにしました。開講日は第二金曜日19:00~です。第1回は終了しました。3回セットの講座ですが、残りだけでもよろしければ是非。
  11/13 『機動戦士ガンダム』表現編
  12/18 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
 ※12月だけ第三金曜日です。
 https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html
 NHK文化センター青山教室では11/29の原恵一監督トークの聞き役も務めます。
 https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1051651.html

3.SBS学苑パルシェ校「アニメを読む」
 10月25日10:30~のSBS学苑パルシェ校での講座は『耳をすませば』を取り上げます。こちらも公開から20年ですね。
 http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=169676

4.栄・中日文化センター「アニメを読む」
 半年に1回のペースで行っている名古屋での講座。次回は11月14日15:30から。  『ルパン三世 VS複製人間』&シリーズ諸作を取り上げ、「ルパン三世」というキャラを考えます。10月から始まった新シリーズにも言及します。現在、これから開催頻度をあげるかどうか検討中で、今回の集客も今後の運営方向の考慮の参考になると思われますので、こぞってご参加ください。
 http://www.chunichi-culture.com/programs/program_161132.html

5.最近の原稿
 『ユリイカ』2015年10月号「マンガ実写映画の世界 -『るろうに剣心』から『進撃の巨人』『バクマン。』『俺物語!!』へ」に「二〇〇二年、『ピンポン』から始まったこと」を寄稿しました。
 『Febri』Vol.31では連載「主人公の条件」、ロングインタビュー「声優語」(藤原啓治さん)を担当し、そして巻頭の『こころが叫びたがってるんだ。』特集でレビューを書いています。


Q&A

 「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
 よろしくお願いします。

Q:きちんと作品数を数えて比較したわけではありませんが、アニメやマンガで「片親の家庭」を描く際、とくに女の子のキャラクターですと、「父(役)・娘」の組み合わせ、つまり父子家庭が多く見られるような印象を受けます。アニメなら、らき☆すた、たまこマーケット、カードキャプターさくら、うさぎドロップ、マンガなら、よつばと!、マスターキートン、Papa told me、高杉さんちのお弁当などでしょうか。(マンガ→アニメ化作品とごっちゃになってますが…点)
男の子が「父殺し」をするのは普遍的なテーマであると思います。しかし、父子家庭で子が女の子だと、当然エレクトラコンプレックスは起こりえませんし、各先品でも、ファザコンともちょっと違うような何かを感じます。
母子家庭は父子家庭の5倍以上の世帯数であるのに、こういった「父・娘」の父子家庭が印象的に描かれる作品が多いのは、どうしてなのでしょう。(匿名希望さん)


A:男親のほうが都合がいい(家にいないことが多い、とりあえず稼いでいそうなので視聴者が生活の心配をせずにすむetc)ことが多いからではないでしょうか。仮説でしかないですが。これは今の時代を反映しているので、時代が変われば(女性が男性並みに稼ぐ時代になったりすれば)、また描写も変化すると思われます。

Q:『響け!ユーフォニアム』の第11話で、田中あすかが、中世古香織に炭酸水を渡すシーンがあります。(中世古は、それを受け取って戸惑うしぐさを見せますね。)
私が吹奏楽をやっていたとき、練習中に炭酸飲料は飲みませんでした。ガスが喉にこみ上げてきて、練習にならなくなるからです。
気になるのは、上記のような事情があるにもかかわらず、わざわざ炭酸飲料を渡した田中あすかの「真意」と、そのシーンにアニメ制作者が込めた何かしらの意味です。(匿名希望)


A:ここは作り手が何かの「真意」を忍ばせたシーンというより、単にあすかが香織の深刻な気分をほぐす(はぐらかす)ために、吹奏楽ではNGとなっている炭酸水を使ったのだと思いました。気負わず、少し休んだら、みたいなニュアンスを、あすかなりに伝えたかったのかなと考えています。

Q:アニメ「Another」をTV放送で視聴していると、四肢欠損など凄惨な描写に黒い幕がかかることがありました。ところが、同じシーンをNHKの番組「MAGネット」内で放送した際は、それがありませんでした。急性ストレス障害などに繋がりかねないこのような表現は、NHKがいちばん配慮しているものかと思っていましたが、そうではないのでしょうか。(ask.fmより)

A:あくまで想像ですが。作品として全部放送する時と、一部だけ放送することの差がまずあるのではないでしょうか。一部だけ放送する場合だと「時間が短いので不特定多数に残酷な表現が届いてしまう可能性が低い」「製作サイドからもらった素材を一方的に改変するのは、著作権的に問題がある」ということから、元素材のまま映像を流した可能性があると思いました。


前回のアニメの門チャンネル

 前回の「アニメの門チャンネル」は上田繭子さんをゲストにお招きして、現在公開中の『心が叫びたがってるんだ。』(『ここさけ』)についてお話ししました。
 大まかにストーリーの進行を追いながらフリートークを行っいました。話題は多岐に及びましたが

 ・脚本の岡田麿里さんらしいちょっと変わった題材。
 ・それを爽やかに処理していく長井龍雪監督の演出。
 ・そしてそれを支える田中将賀さんの表現力。

 という3点については、おおむね上田さんと意見が一致しました。
 上田さんのお話の中では『truetears』との比較(順と乃絵、菜月と比呂美を対比させる)や、『あの花』と比較(ゆきあつの不在)がでてきて、過去の岡田作品との対比から、『心が叫びたがってるんだ。』の立ち位置を考える視点が出てきました。
 また僕個人としては、「王子様(と裏返しの「玉子の妖精」)というモチーフが、今ひとつ飲み込めていなかったのですが、上田さんとお話をしていてそのあたりの構図がどう設定されているのか腑に落ちました。
 要は、王子様(父親)がきっかけとなって、自分を縛ることになった呪い(玉子の妖精)を王子様(拓実)が解いてくれたけれど、拓実は王子様ではなくて……という構図でできているというわけでした。
『ここさけ』が興行成績10億円を超えると、またひとつ新しい未来が近づくと思うので、興行成績も楽しみです。


不定期アニメ日記

 『サムライチャンプルー』などで知られる制作会社マングローブが倒産しました。

  アニメスタジオのマングローブが破産手続きを開始(アニメ!アニメ!)

 これについてたとえばこんな分析記事も出ています。

  マングローブ:なぜ行き詰まったのか? アニメ業界の課題浮き彫りに(まんたんウェブ)

 この分析は「遠からずも当たらず」(当たらずとも遠からず、ではない)という感じで、業界の問題とマングローブの問題を同一視しすぎな感じがしました。
 僕なりに整理をすると、倒産には3つの要員が絡んでいると考えています。まんたんの原稿を読み解きつつ、同社の、というよりアニメ制作会社の一般論として何が起きたのかをここで考えてみたいと思います。

 

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