前回、意見を募ったイベントですが、あまりリアクションがよくないようなので今回は見送りとします。
 朝日新聞「茶話」掲載原稿をまとめたKindle同人誌を出しました。編集は@bono1978さん 表紙イラストは(『お前はグンマを知らない』「So Happy」のジャケットイラスト担当)@jimaojisan12さんです。タイトルは『新聞に載ったアニメレビュー』。  2011年から2015年まで足掛け5年、アニメと並走した記録です。是非お求めください。

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1.最近のお仕事紹介
2.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
3.前回のアニメの門チャンネル 4.お蔵出し原稿
5.連載一覧

最近のお仕事紹介

1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
 6月16日『DEVILMAN crybaby』(+旧作)【受講申込】
 7月21日 教養としての高畑勲監督入門
 8月18日 アニメと戦争 80年代編
 ※『マクロス』や『FUTUREWAR 198X年』、『火垂るの墓』などを中心に取り上げる予定です。
 9月15日 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』
 【受講申込】

2.7月のSBS学苑(静岡)
 7月29日は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を取り上げます。以前も取り上げた作品ですが、6月発売の4KリマスターBOXの取材の成果なども一部反映しつつ再演します。
 【受講申込】

3.6月の「オタクの学校:(東京・浅草)
 次回の「オタクの学校」はこちらも『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を取り上げる予定です。詳細が決まりましたら、また告知をします。


連載「理想のアニメ原画集を求めて」

文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

第66回『「食べるを描く。」展』

 先日、宮崎駿監督の最新作『毛虫のボロ』を観に、久々に三鷹の森ジブリ美術館に行きました。その時に開催中だった企画展示『「食べるを描く。」展』が興味深い内容でした。
 三鷹の森ジブリ美術館は、アニメスタジオ「スタジオジブリ」の資料や企画が見られる、日本でも珍しい、アニメに関する専門の美術館です。今回の展示は、思っていた以上に作画的な見どころが多い内容となっていておすすめのものでした。
 『「食べるを描く。」展』は、宮崎駿監督や高畑勲監督の作品の中ではよく見ることができる、食事シーンに注目した展示です。

 展示室の入り口は、レストランにあるような食品サンプルのガラスケースの中に、ジブリ作品で見たことのある数々のメニューの造形物が置かれているところから始まります。
 中に入ると、レストランのようなテーブルの上にメニュー表が置いてありました。これは架空のメニュー表として、またファイリングされた資料として置かれています。そこを抜けると、『となりのトトロ』に出てきた主人公たちの生活する家の居間が作られており、お客さんはみんな靴を脱いで部屋の中に上がっていきます。そこから台所を抜けて勝手口から出ていくと、今度は『天空の城ラピュタ』の飛行船の中のキッチンが作られた空間があり、そこを抜けていくという、なんとも面白い趣向の展示でした。
 作られた家や台所、キッチンには、ちゃぶ台の上にお弁当が置いてあったり、キッチンの戸棚や引き出しの中を覗いてみると、料理に必要な材料や食器が本当に置かれているという体験的な展示で、この部屋の中をウロウロするだけでもとても楽しめる内容でした。

 それだけでも楽しい空間なのですが、興味深かったのはレストランゾーンの壁に展示されていた資料の数々です。絵コンテや原画、動画、タイムシートなど、各工程に注目する形で、様々な作品の原画の複製や本物の原画が展示されていました。展示エリアはそこまで広くないですが、今まで見たことのない資料で、見応えがあるものでした。
 例えば、『ホーホケキョ となりの山田くん』の酔っ払ったお父さんがバナナを食べるカットでは、担当した橋本晋治さんが動画に至る動きまで全てを描かれていて、何百枚(!)にまで膨れ上がった本物の原画の山がどっさりと置かれていたり。
 『紅の豚』の瓶のジュースを飲むカットでは、宮崎監督からの瓶やジュースの細かい塗り分けや、瓶の中身のジュースがどのように動くかという僅かな波の動きに対する指示が書かれたものなどもありました。

 他にも『耳をすませば』や『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』などの資料が置かれていました。全体的に、どのような指示や修正が入ったかという事を細かく説明している展示となっている変わったもので、ジブリ作品のファンに向けた造形物や実物大の部屋の展示に対して、こちらはアニメ制作に関して興味のある人に向けられた濃い内容のものでした。
 複製された原画には、下の絵が透けて見比べられるような形で、原画の上に修正原画が印刷された薄い紙が重ねられており、一度描かれた絵がその後どのように修正されたのかを実物として見ることができました。こうした修正は、実際の現場では、確かに上に紙を重ねて見ているものですが、原画集などでは、印刷され、横に並べられたものを見ることが一般的ですので、珍しい体験でした。

 「食事シーン」というシチュエーションを出発点に、それがアニメの技術の中でいかに難しいものであるか、どこまで細かくこだわっているのかを技術者の視点から伝えようとしていて、作画ファンとしては実に見ごたえのある展示でした。
 特に、『風立ちぬ』での近藤勝也さんが描かれている食堂での食事シーンは、食事シーンであると共に、画面の中で同時に大量の人間がバラバラに動くモブシーンでもあり、そこで取り上げられている素材が「タイムシート」だというところが実にマニアックだなあと思いました。タイムシートを見てみると、この食堂の画面の動きが実に整理の行き届いたものであることが分かり、面白いものでした。

 アニメの食事シーンの難しさといえば、「キャラクター」と「食べ物」という、完成画面では同時に存在しているものが、それ以前の原画や動画で描かれている段階では、同じ1枚の紙に描かれているかどうかというのも難しい問題です。
 例えば、皿に盛られた唐揚げをキャラクターが食べているとして、手前に唐揚げの皿がある。その奥にキャラクターが居る場合、それぞれを別々のセルに描いてあっても、唐揚げを箸で取る瞬間は同じセルになるのか?とか、唐揚げを1個取るごとに皿の上の絵を変えていかなければいけないのか?など、食事シーンは、アニメの中で絵の組み合わせを考えるのが難しいシチュエーションの最たるものの一つだと思います。

 タイムシートという、 重要度の高さが一見しても分からない資料であるにも関わらず、それがいかにアニメ制作の中では重要な要素であるかを伝えようとしていることや、そこにある技術の高さを伝えようとしていることが、展示内容に関して非常に能動的な姿勢を感じさせられました。
 企画・監修をしたのは、初代ジブリ美術館館長でもある、宮崎吾朗監督だそうです。
 動画の動きまで全てを一人が描ききるアニメーターの執念から、複雑な画面を実に綺麗に整理してまとめ上げる様が見れたり、僅かな動きや質感にまでこだわって画面を作っていく宮崎監督のこだわりを感じられたりと、小さめの展示ながらアニメ制作の醍醐味を伝えようとする意気が感じられるものでした。
( 『「食べるを描く。」展』 /三鷹の森ジブリ美術館 /入場チケット:大人1,000円)


お蔵出し原稿

 最近、変則的な形であれまさかのBlue-ray化が実現した『テクノポリス21C』。今から6年前に書いた原稿で、「迷作劇場」というフランクな連載だったので、基本はソースにしないwikipedeiaを参照したりしてます。

迷作劇場『テクノポリス21C』

 夢は夢のままにしておくことが美しいこともある。『テクノポリス21C』は、まさにそういう作品だった。
 多くのファンが『テクノポリス21C』の存在を知ったのは、「アニメージュ」1981年11月号の付録、「スタジオぬえのデザインノート」だったのではないか。この「スタジオぬえのデザインノート」に掲載された、3体のテクロイド(犯罪捜査のために開発されたアンドロイド)のデザインがとてもかっこよかったのだ。そのデザインを見て、まだ見ぬ、制作中の本編に思いをはせたのだった。