アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門メールマガジン

4月30日、アニメレビュー勉強会結果発表

2016/08/12 03:00 投稿

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毎月月末に開かれている「オタクの学校」でアニメレビュー勉強会を復活させました。4月30日開催で、試しに1回やりまして、可能なら年内にもう1回ぐらいはできたらな、と。そんな再開勉強会のトップ原稿がこちらでした。お題は『ラブライブ! The School Idol Movie』です。ブログ掲載が遅くなってすみません。


第1位
磯部正義/想定媒体:映画雑誌
(タイトル)
期間限定上演のミュージカル

(本文)
 とつぜん降ってわいた廃校の危機から母校・音ノ木坂学院を救うため「スクールアイドル」としての活動を開始した穂乃果たちμ'sの面々。奮闘のかいあって学校は存続することになり、3年生たちの卒業にともなうμ'sの終わりも近づきつつあった。そんななか、第3回「ラブライブ!」が巨大会場・アキバドームでの開催を検討しているという報が舞い込んでくる……。
 『ラブライブ! The School Idol Movie』(2015年6月13日公開 監督:京極尚彦 制作︰サンライズ)は、TVシリーズ『ラブライブ! School idol project』(1期:2013年1月~3月、2期:2014年4月~6月)の後日譚を描いた劇場作品である。大会場での開催を実現させるために協力してほしいとの打診を受けたμ'sメンバーは、「スクールアイドル」キャンペーンのライヴを行うため一路海外へ。言葉も通じない不案内な地に降り立った彼女たちだったが、初めての海外体験はじつにテンポよく推移していく。とりわけその足どりを軽快なものにしているのが、歌唱シーンへの自在な転換が生み出すリズムだろう。
 雨を理由に外出を諦めようとした一同のなかから凛が飛び出すことで始まる"Hello,星を数えて"。みんなで白米を食べに出た帰りに独りはぐれてしまった穂乃果が途方にくれていると流れてくる、女性シンガー(CV.高山みなみ)の歌う"As Time Goes By"。キャンペーンのライヴ映像のおかげで、帰国したらすっかり顔バレしていて身動きがとれなくなった最中、にこたち3年生トリオがノリノリで歌い出す"?←HEARTBEAT"……。大小とりまぜたハプニングやトラブルがそのまま音楽の始まる契機になることで、出来事の継ぎ目がなめらかに溶接されていて、それがこの映画の、びっくりするほどトントン拍子に進んでいくリズム感の、ひとつの源になっている。
   *
 そんなこの映画の軽快なリズムにいったんぐっとブレーキをかける出来事が、「μ'sを続けてほしい」という声の高まりだ。(学院を)「終わらせない」ために活動を開始した彼女たちは、今度は(μ'sを)「終わらせる」ことへの決意で心をひとつにする。そこに共通しているのは、彼女たちがこだわり通したものが「学校/スクール」だったという点だ。「学校」という場所にこだわるからこそ"廃校"させまいと奮闘し、「スクール」アイドルとしての自分たちにこだわるからこそ、彼女たちはμ'sをここで、きっぱりと終わらせようとする。
 「そこにとどまったままではいられない、期間限定の人生の一時期」としての「学校/スクール」。こう書くとまるで「青春」の定義そのもののような、この「期間限定」の時間への情熱によって、この劇場版は、はちきれそうなほどに《青春映画》である。そしてその情熱は、活動終了を伝えた穂乃果たちへのエールを胸に、街を埋め尽くさんばかりに集ったスクールアイドルたちとともに、μ'sが"SUNNY DAY SONG"を歌いはじめるシーンで爆発する。
 「アイドルものだから」というジャンルの約束ごととして歌っているんじゃない、そういうイベントだから段取りとして歌っているのでもない、感極まって思わず歌わずにおれないような気持ちのたかぶりのままに、μ'sも、スクールアイドルたちも、一緒になって踊る家族や街の人たちも歌っている……そう信じることのできる理由が物語にしっかり根をおろしているという点で、この映画はこれ以上なくストレートな《ミュージカル映画》である。
   *
 むせかえるほど《青春映画》で、多幸感に酔いそうなくらい《ミュージカル映画》。「期間限定」にこだわり通したことで、『ラブライブ! The School Idol Movie』はそんな映画になった。
(1577w)
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