天野統康のブロマガ「マネーと政治経済の原理からニュースを読む」

無意識化されてきた民主の原理  目指す民主主義の方向性について 真理、自由、平等、友愛の相互発展「補足付き」

2014/08/17 06:39 投稿

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※この記事はこちらのテーマの続きです
<リンク>天野統康のブログ 政治経済思想理論

現在の操作される自由民主主義の構造を理解するには、
経済とともに民主政治の基本原理を考える必要がある。

「無意識化」されている民主政治の基本原理を「意識化」する
ために、図を用いて見える化をしなければならない。

 

前回までに


 

.社会とは人間の欲求の実現の場であること



2.
多数が欲求を実現できる社会=幸福な社会



3.
人間の本能的な欲求は快を求め、不快を避けること



4.
快の選択肢が最大限保証されている社会
=人権に基づく民主主義(近代民主主義)


5.このために近代民主政治システムが世界を席巻している

6.近代民主政治を構成する基本的な権利は、自由、平等、
友愛、真理の4つ



7.近代民主主義の前提が「人間は生まれながらにして
自由で平等である」という自然権の思想に基づくため
自由、平等、友愛の権利が必然的に発生

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8.民主主義の真理は、人間の尊厳という思想的観点と
選挙という制度的観点から発生する。
その真理は目標(自由、平等、友愛の統合)によって
規制されると同時に、その目標を規制する。
この結果、4つの権利の相互規制による統合関係が発生する。

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ここまでをお伝えした。



今回は、自由、平等、友愛、真理の4つの権利が
統合状態のまま発展する民主主義の目指すべき
方向性について解説する。

人間にとっても社会にとっても方向性が必要なのは、
当然である。
方向性が無いのなら、その社会は基準がなくなり迷走してしまう。

その結果として起こるのは、声の大きい意見が、
権力のあるものの意見が、反映される社会になる。

人間の尊厳を根本規範に定義し、目標とするのなら、
その実現を達成できる方向性を意識化しなければならない。

その方向性は人間の欲求を満たすものでなければならない。

英国の作家で哲学者のコリン・ウィルソンは人間の目指している
欲求について以下のように述べている。

(コリン・ウィルソン ずっと人間のことばかり考えていた 
アスペクト より転載)

 
「P106
ウェルズは人間を海での生活が危険すぎるので海から
浜へやっとの思いで這い出てきた最初の両生類になぞらえています。

しかし、両生類は残念ながらひれ足しかなかったために
浜で少し動き回るとすぐに疲れきってしまい、命を支えてくれる
海へと戻らなければなりませんでした。

ウェルズは、現代の人間はまさにその状況におかれている。

精神の、知性の生き物になりたいのだが、ひれ足だけで
足がないのでなれないのだ、といっています。
人間の問題は、どうやって足を生やすかということだ、
というのです。


「P107
人間はまだ精神の生き物になってはいない、という感じがします。
足を生やそうともがいているのです。

この、水の中ではなく陸に住みたいという願いこそが、
ユングが宗教的機能と呼んだものなのです。」


(転載終了)


人間が精神と知性の生き物になるには、それを実現する足を
生やす必要がある。
そのための規律がなければならない。

放っておけば、エゴイズム、ミーイズム、カルト、拝金主義
権威主義が跳躍跋扈するようになる。

歴代の宗教家や思想家が様々な規律を作り上げきたのは
人間は放っておいては不完全な生き物であることを実感
していたからである。

民主社会に生き、それを肯定するのなら、民主主義の
理念に即した規律が必要になる。

その規律とは法律だけ守っていればいいということではない。
憲法にも規定されているように民主主義の規律を守り発展
させるには不断の努力が必要なのである。

目標となる自由、平等、友愛の統合状態を意識化し、
現状としての真理を意識化し、
目標に向けて現実を改善させようと意識化すると
以下のような図になる。


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■目標の状態の明確化


方向性を考えるときに、目標の状態が明確に意識されて
いなければならない。

ここで想定される目標とは、民主制のもとでの
「誰もが支配されない社会状態」である。

民主制のもとで誰もが支配されない社会状態とは、どのような社会か。

過去のモデルを基に考えるとするなら、以下のような社会になる。

・古代ギリシャの市民社会(奴隷を除く) + 高度科学技術文明

古代ギリシャを例に出したのは、このモデルが民主政治に
基づかなければならないためだ。

賢明なる君主のもとで繁栄した社会を想定することは
できないのである。

また「誰もが支配されない状態」を想定するのだから、
古代ギリシャに存在した奴隷は除かれなければならない。

そのために奴隷の代わりに生産活動を行う機械が存在する
高度科学技術文明が必要になる。

マルクスが述べたように、「必然の王国と自由な王国」が
あるのなら必然を最小化し、自由を最大化する社会を作ることが
誰もが支配されない社会の前提条件となる。

■方向性における真理

方向性を考えるときには、目標だけでなく「真理」の定義も
明確にしなくてはならない。

民主の真理には二つの意味がある。

・人間同士による支配関係
・状況による支配関係


人が人を支配することについては今までお伝えしきた。

もう一つ、状況による支配関係を認識することも民主の真理
には含まれる。

状況による支配とは、人間が生存し、幸福を得るために
必然とされ強制される状況の支配である。

例えば、人間が生きている限り衣服を洗濯しなければならない
必要があるが、自動洗濯機は手洗い作業から人間を解放した。

科学技術が人間を状況による必然の支配から解放した
わかりやすい事例である。

目標とする社会が、
「人間にとっての必要を最小化し、自由を最大化する社会」
であるならば、状況による必然化を最小化し、自由を最大化する
ことを目指さなければらない。

■自由、平等、友愛と真理の拡大

必然を最小化し、自由を最大化する目標を実現していくには、

自由、平等、友愛の拡大と共に真理の拡大が
セットで行われなければならない。

目標を達成するには、市民を労働から解放する高度科学技術文明や
そのような社会を実現するための現状を把握する認識能力の拡大
を必要とするからだ。

真理は目標に向けて発展させるとともに、規制されなければならない。
科学技術の発展は、その副作用として科学の暴走を作り出すからだ。

例えば人類を皆殺しにしてしまう生物兵器や核兵器の開発。
人間の精神を奴隷化するマインドコントロール技術の発展など。

<参考リンク>米国で人類を全滅させる恐れのあるインフルエンザウイルスの変異株開発

科学技術を含めた真理は現状認識の問題であると同時に、
発展させ規制させる方向性の問題でもある。

民主政治と思想の方向性の中に、真理を明確に位置づけなけれ
ばならない。

■道徳と法を統合する人倫の方向性の実現

ヘーゲルは
道徳という主観的なものと、
法という客観的なものの
統合が人倫の実現となると述べた。


個人の道徳という主観的なもの(内面的規制)

社会の法という客観的なもの(外面的規制)
=人倫(法と道徳の統合)

自由、平等、友愛、真理の統合された発展は、
道徳と法を、人間の尊厳に基づく人権思想と
選挙による民主政治という形で統合させ人倫を作り出す営みである。

何故なら、基本的人権も、選挙の諸権利も、人間の尊厳の実現の
ために、自由、平等、友愛、真理という4つの理念を原理にしている
からだ。

つまりこの発展の方向性は、個人の道徳にも社会の法にも適用
されるということだ。

この一連の関係性の中から、民主政治のもとで人間が精神と
知性の生き物になる規律となる方向性が生み出される。

しかしこのような基本原理が意識化されることは今までの
民主政治には無かった。

それは「無意識化」されてきたのである。

次回は目標を達成するための社会的手段である選挙に
ついてお伝えする。




「補足」
何のための真理かが定義されてこなかったために
このモデルが作られなかった理由については以下で解説。


<以下有料>



 

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