「社会が根であり、幹であるとすれば、自由とはその果実である。
したがって、どの時代においても、人間は自己の自由を
歴史の初めにではなく、終わりにさがすべきであり、
各人の真実にして完全なる解放こそが、歴史における真に
偉大なる目標であり、最高の目的なのである。」
ミハイル・バクーニン「神と国家」(前掲書)247頁
<リンク>Philosophy of Development ~第6章 ロシアの近代化に伴う思想展開
今回は、前回に続き、社会が目標とするべき幸福の定義について。
・何故、目標が必要なのか。
社会の目標は構成員たる市民の幸福の実現にある。
そもそも社会とは人間の欲求に応えるために作られている
ものだ。
・生存、食事、結婚、育児、社会保障などなど。
欲求するのは幸福感をえるためである。
社会の存在目的が構成員の欲求の実現にあるならば、
欲求の実現=幸福の実現
となる。
・それでは幸福の定義とは何か?
人間社会の幸福の定義は人類という種族の本能に基づか
なければならない。
本能を否定する社会は、非人間的な社会となり
必ず警察国家のような強権が必要になる。
例えば世界の情報や交流を遮断している北朝鮮のような
社会が典型である。
本能が満たされている社会であればあるほど、政治が人々を
抑圧する割合は少なくなる。
人間の本能の行動原理を一言で表すと、
「快を求め、不快を回避する」
本能に基づき快を求めるから、食べ、飲み、結婚をし、
芸術を楽しみ、公衆衛生を良くし、健康であろうとする。
不快を回避しようとするから、空腹、孤立、不潔、
病気を無くそうとする。
しかし、何が快か不快かは、人によって異なる。
ある人には快であっても、別の人にとっては不快になることもある。
そうなるのは人間が多様な性質を持つ複雑な生き物の為だ。
社会という集団の場においては、快、不快の対立が起こり、
その調整が必要になる。
幸福な社会の定義とは、本能の行動原理である快を求める
選択肢を、最大多数の構成員に最大限与えることができる社会
のことである。
何故なら、快の選択肢が多ければ、多様な人間の欲求を
満たし幸福感を与える社会だからである。
逆に快の選択肢が少なければ、多様な人間の欲求をみた
せないために幸福感を与えにくい社会となる。
以上であるべき社会の幸福の定義がなされた。
・快の選択肢を最大化させる目標とは何か
快の選択肢を最大限与える社会システムが
人権に基づく民主主義である。
君主制や身分制の否定⇒「誰もが支配されない社会の実現」
この目標を前提とするために、
「人間は自由で平等である」
という人間の尊厳の原理が作られ、
「社会的な自由、平等、友愛の権利」が発生した。
各権利を選挙制度という形で、政治制度に取り入れて
議会制民主主義を実現させた。
選挙の複数政党制の必然から市民が選択をするための
情報が必要とされ、「社会的な真理の権利」が発生した。
人権に基づく民主主義が、自由、平等、友愛、真理を
原理としているのはそのような理由である。
人権民主主義が拡大を続けるのは、人間という種族の快を
求める選択肢がどの政治制度よりも存在しているからである。
それならば、
「誰もが支配されない社会の実現」という目標に基づき
自由、平等、友愛、真理の原理で構成される人権民主主義
は人間のあるべき社会にふさわしいということになる。
17世紀にイギリス、オランダで発展し、18世紀にアメリカ、
フランスで生まれた選挙に基づく民主主義制度と人権思想は
セットで世界的な拡大を続けている。
旧ソ連・東欧諸国の崩壊やアラブの春に見られるように
民主主義でない国はますます少なくなっている。
拡大を続ける理由は、現在ある社会制度
の中では、人間の欲求を最大限満たすからだろう。
しかし民主主義には一つの大きな欠陥があった。
それは、民主主義を作り上げてきた主要な勢力が抱えて
いた問題であった。
革命を起こしてきた主要な勢力は
・一般市民
・銀行家や大商人(民主主義の活動や理論の資金の提供者)
この銀行家の勢力が民主主義の元祖であるイギリスやオランダ、
フランスなどで通貨発行権を独占していたために、
歴史的に民主国家が通貨発行権を持つことができなかった。
抵抗をしていた米国も1913年にFRBを創設することで乗っ取られた。
その状態が現在まで続いている。
その結果、民主主義が通貨発行権を独占してきた勢力に
操作される仕組みが作られてきた。
快の選択肢を最大限に与える最大多数の最大幸福を
実現させる仕組みであるにもかかわらず、民主主義が
うまく機能しない根本原因となっている。
そして、驚くべきことに21世紀までは通貨発行権との関連から
民主主義の問題が語られることは殆どなかったのである。
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