インテグラル・ジャパン代表の鈴木規夫博士から、拙著の『サヨナラ! 操作された「お金と民主主義」』の書評をいただいた。
鈴木氏は対象化されないものは分析出来ない。
と論じている。
私も、今までの人類はマネーと資本主義経済と民主主義政治の基本が意図的に
無意識化されることによって、対象化出来なかった。
そのため正確な分析が出来なかった、と認識している。
操作する基本は、基本となるべき対象の無意識化を起こすことだ。
人々の「無意識下」と「意識化」を操作すること。
その力を持つこと。
これが、自由民主主義の操作方法の根本的な操作方法であること。
その事の重要性を強調しすぎてもしすぎることはない。
書評ありがとうございました。
(以下転載)
<リンク>Norio Suzuki Blog
今、天野 統康の貨幣(マネー)に関する著作を読んでいる。
天野さんとは、しばらくまえにEmailでやりとりをさせていただいたころがある。
旧著の中でひとつ理解できないことがあり、それについて質問をさせていただいたのだが、非常に丁寧な御返事をいただいたことを今でも覚えている。
昨年の暮れに出版された今回の著作は、貨幣の発行権という視点をとおして、近代・現代社会の構造を分析しようとする力作である。
博士課程で生態学関連の書籍を読んでいたときに(たとえば、Herman Dalyの提唱する環境経済学の関連書)、今日、人類が惑星規模で直面する生態系崩壊の問題について真に探求しようとするならば、結局、人類の経済活動の核に存在する今日の貨幣制度について理解をしなければならないことをいたく痛感したことがあった。
それ以降、Bernard LietaerやWilliam EngdahlやRichard Heinbergの著作等、貨幣の問題に関して論じている資料には目を通すようにしていたのだが(また、YouTube上には貨幣問題に関する膨大な資料がある)、いかんせん、わたしのような経済学音痴には、いろいろと腑に落ちないことがあり、常に不全感を覚えてきた。
天野氏の著作は、一般書として執筆されたものであることもあり、それらの著作と比較すると、数等判りやすく書いてあり、また、日本という独自の文脈をふまえた分析が呈示されているので、その意味では、いろいろなあたしい刺激をあたえていただいている。
ともあれ、あらためて貨幣という視座から人間の歴史を俯瞰してみると、実にいろいろな発見があるものだ。
とりわけ興味深いのは、利子というものが、人間(個人と社会)にあたえる影響である。
天野氏が指摘するように、今日の社会において、人間は――「利子の返済」を構造的な衝動として内包している今日の経済社会に生まれることそのことをとおして――脅迫的なまでの過活性状態に恒常的に置かれることになる。
貨幣発行権を掌握する金融勢力に利子という貢物をするために、社会全体が常に価値を生産しつづけなければいけない状態に置かれることになるのである。
換言すれば、これは、今この瞬間に安息する権利を人間が剥奪されているということでもある。
時間は常に利子(負債)という義務を生みだしつづけることになる。
つまり、時間そのものが、人間の内に満たされるべき虚無をつくりだす装置となり、われわれにそれを「解決」するための労働に従事しつづけるように仕向けることになるのだ。
実質的に社会に生きる全ての人々がそうした状態にあるので、結果として、その皺寄せは、そうした価値創造行為の基盤である自然環境に来ることになる。
その結果が今日の惑星規模の生態系の崩壊である。
思想家のケン・ウィルバーは、“Atman Project”という概念を呈示して、人間というものが、自己の内に存在する根源的な虚無感を満たそうとして、常に持続と創造の行為に向けて動機づけられていることを指摘している。
つまり、人間にとり、今この瞬間に安息するというシンプルなことが実は非常に困難であることを指摘するのだ。
しかし、それだけでは、今日の狂的なまでの人類の過活性状態を説明することはできない。
そこには、利子を生む貨幣という、そうした本質的衝動を劇的に増幅する人為的装置が働いていることを指摘しなくては、説明が不十分なのである。
残念ながら、こうした視点が現在のインテグラル・コミュニティには欠けている。
いずれにしても、貨幣(マネー)の問題は現代最大のタブーである。
そして、それは、そのようにタブーとして隠蔽されることをとおして、現代人の精神に神として君臨することになっているのである。
人間は神の恩寵を獲得するために必死の努力をするが、そのようにして自己の存在を呪縛する神を対象化して、そもそもそれが絶対化・神聖化されている理由を探ろうとはしない。
むしろ、われわれは、貨幣(マネー)が神であることを当然の事実としたうえで、その恩寵を獲得することに全存在を懸けて努力をする。
その姿は正に宗教的としか形容できないものである。
社会の最大のタブーというのは、全てのひとの目の前に無防備に存在していることの中に隠されているのだろう。
空気のように、全てのひとが「あたりまえ」の事実としてとらえているものに隠されるのである。
つまり、タブーとは、厳重に秘匿されることにより温存されるのではなく、白昼の中に堂々と露呈されることで、誰も疑問を抱かないようにすることによって温存されるのである。
貨幣(マネー)は空気のようなものである。
あまりにも身近なところにあるために、それをあらためて対象化することの必要性を感じることもない。
しかし、心理学が示すように、対象化しえないものについて、われわれは思考や探求をすることはできない。
貨幣(マネー)がタブーでありつづけるのは、正にそれが対象化しえないほどに、身近なものだからであるといえるだろう。
先述のように、われわれは、貨幣(マネー)を獲得するための方法を情熱的に探求するが、そもそも、そのようにして自身が全身全霊を賭して獲得しようとしているものが、果たしていかなるものであるのかということを本質的に探求しようとすることはない。
Howに関しては思考をするのだが、Whatに関しては思考しないのである。
(転載終了)
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