西側の報道ではプーチン・ロシアは、人権を無視する独裁国家と形容されることが多い。

ウクライナ侵略に対する反対を述べて政治活動を行うだけで、逮捕者が続出する状況はその指摘の通りに見える。

一方で、プーチン大統領や、その影響下にあるロシア議会が、国民の選挙によって代表として選ばれてきたのも事実である。

選挙が行われ代表が選ばれてきたということにおいては、同じように独裁国家とされる中国や北朝鮮とは違う体制である。


そこで西側の民主主義と、プーチンロシアの民主主義の比較を行いながら、共通点と相違点を記述する。


西側の議会制民主主義はフリーメイソン最上層部などを中心とした国際秘密結社の権力(所謂ディープステート)によって「操作される民主主義」である。

以下の図を参照。

(上記図は拙著『フリーメイソン最上層部により隠されてきた民主主義の真の原理』p184より転載)


この西側の独特な民主主義の特徴については、以下の本で詳しく記述している。

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一方で、その西側と激しく対立し、独裁的と批判されるプーチン・ロシアの民主政治はどのようなものなのか。


2月16日に反体制派の政治活動家ナワリヌイ氏が、ロシアの北極圏にある過酷な刑務所で死亡した。

そのナワリヌイ氏を追悼しに集まった人々をロシア警察は何百人も逮捕している。


2022年2月ののウクライナ侵略以降、プーチン・ロシアはそれまでの強権主義的な民主政治から、全体主義的な傾向を強めてきた。


その結果が今回のナワリヌイ氏の刑務所への長期に渡る収監(19年という不当に長い刑期)と、追悼者達への大量拘束に表れている。


一応ロシアは国民の選挙によって大統領や議会が選ばれる民主政治である。

しかも、憲法の17条で「市民の自由の権利」を、21条で「個人の尊厳」の保護を明確に規定している。


新解説世界憲法集 第3版 (Kindle の位置No.9095). 株式会社三省堂. Kindle 版. 

ロシア連邦憲法より転載


第 2 章   人 と 市民 の 権利 および 自由


第 17 条〔 権利・自由 の 尊重〕

 ①  ロシア 連邦 において は、 国際法 の 一般 に 承認 さ れ た 原則 および 規範 に したがい、 ならびに この 憲法 に したがい、 人 と 市民 の 権利 および 自由 を 承認 し、 保障 する。

 ②  人 の 基本 的 権利 および 自由 は、 譲り渡す こと の でき ない もの で あり、 生まれながら に し て 各人 に 属する。

第 21 条〔 個人 の 尊厳〕 

①  個人 の 尊厳 は、 国家 が これ を 保護 する。 いかなる こと で あれ、 それ を 軽んずる 根拠 と する こと は でき ない。 
②  何人 も、 拷問、 暴力 および その他 の 残酷 な もしくは 人間的 尊厳 を 傷つけるよう な 待遇 または 刑罰 を 受ける こと は ない。

(転載終了)


このような素晴らしい憲法の条文があるにも関わらず、上記の権利は政権批判を行う場合、極めて制限された状態になっている。


一方で、全体主義的傾向を強めているとはいえロシアが中国や北朝鮮のような完全な独裁国家でないのも確かである。


例えば、今回死亡したナワリヌイ氏が、プーチン大統領のために建設しているとされた「黒海沿岸の宮殿」を告発するYoutube動画は、1億3000万回以上も再生されている。




ロシアの政治経済が専門で多数の著作のある国際アナリスト北野幸伯氏によれば、

「この動画はロシア語で作成されているので、見ている殆どはロシア人であり、1億人くらいのロシア人が見ているだろう」

とのこと。

つまり、中国や北朝鮮と違い、ロシアではYoutubeを視聴することが出来る。

またプーチン政権を批判する動画も(発信者側には逮捕されるという多大なリスクを伴いながらも)流すことが出来ている。

またX(旧ツイッター)やFacebookなどの西側のSNSの使用は制限されているが、VPN(仮想専用ネットワーク)を用いれば可能だという。

そのため、ナワリヌイ氏は死ぬ直前まで獄中からXに投稿を続けていた。

https://x.com/navalny/status/1757771750958362690?s=20



それでは現在のロシアに言論の自由があるのかというと、政権批判やウクライナ侵略の反対に対して多くの逮捕者が続出している現実をみれば分かる通り、「制限された上での言論の自由」である。


西側では権力者を批判して逮捕されることは滅多にないが、ロシアでは日常茶飯事である。

この違いは、法の究極の前提条件とされる「根本規範」が違うためだ。

以下の図を参照。

(上記図は拙著 『フリーメイソン最上層部により隠されてきた民主主義の真の原理』p246より転載)

上記の図にある「自由、平等、友愛、真理の諸権利」は、普通選挙を行っている民主政治では必然的に発生する権利だ。

西側は、日本国憲法やドイツ憲法に代表されるように「個人の尊厳(または人間の尊厳)」を「根本規範」にして、「自由、平等、友愛、真理の諸権利」を認めている。

「個人の尊厳」とは、「物事の善悪と真偽の判断を行う人格の自由の保障に最高の価値を置く考え」のことだ。そのため個人の尊厳を重んじる西側では、言論の自由は基本的に保障されている。

一方、プーチン・ロシアでも上記に転載したように「個人の尊厳」や「言論の自由」の保護は憲法で明記されている。しかし、その上部に「公共の秩序」が存在している。

そのため、根本規範が「個人の尊厳」ではなく、「権力が定める公共の秩序」なのである。


このようなロシアの民主政治の状態を西側と比較した場合、

西側が「操作される民主主義(法の支配の目的である「個人の尊厳の意味」を教えず、その結果、価値相対主義的な性質となる諸権利を誘導する)」であるとするならば

プーチン・ロシアは「統制される民主主義(権力が定める公共の秩序の下での諸権利)」であると言えるだろう。


三権(行政、立法、司法)が分立しながらディープステート権力によって操作される西側の体制と

大統領に権限が集中し、三権が統率されるロシアの体制の違いを表したのが以下のNHKの解説である。

(上記図【詳しく】ロシアの憲法って?プーチン大統領と憲法改正 | NHK | ウクライナ情勢 より転載)



ロシアでは、ウクライナ侵略以降、大統領と議会によって次々と言論統制を行う法案が可決されている。

ロシア大統領、資産没収法案に署名 意図的に虚偽情報を流し有罪判決を受けた市民・組織の金銭、貴重品、その他資産が対象 (kagonma-info.com)


議会の多数派によって、言論弾圧が公然と行われている。

これは選挙で多数派になった勢力の暴走(民主主義の暴走)である。

言論の自由など民主主義を成り立たせている基本的人権を、一時的に権限を得た議会の多数や大統領がその権限を用いて侵害する行為を規制する「立憲主義」が機能していないことを意味している。


民主的な権利を守るためには、民主主義の暴走(多数派の暴走)を規制する立憲主義=立憲民主主義でなくてはならない。


しかし議会、行政、司法が特定の勢力に独占されているのはロシアだけではなく、西側の多くも似たようなものだ。

ロシアと戦争をしているウクライナにも言論の自由(ロシアを擁護する場合など)はほぼ存在しない。

ロシアほど露骨ではないとはいえ、西側も立憲主義が機能していない事例は多い。


一部の大財閥・グローバル企業・秘密結社に牛耳られている事に対する反発が、現在の西側市民の間で高まっている「民主主義への不信感」なのだ。

陰謀論、アメリカで拡大 有権者の44%「連邦政府は秘密結社が掌握」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)



西側とロシアの民主政治の特徴の共通点と相違点を簡単にまとめると


共通点

・特定の権力に三権(行政、立法、司法)が管理されている事


・情報発信の自由は存在する事(ロシアの場合、発信者側・活動家側に逮捕などの多大なリスクが存在する)


・選挙で政治権力の代表が選ばれる事



相違点

・西側は「個人の尊厳」から発生する諸権利を利用する形で管理している事。


・ロシアは「個人の尊厳」の上部に「国家に対する公共の秩序」をおき、それを基に諸権利を統制している事


・西側は中央銀行も含めた諸権力を独立させた形で「カネと情報・暴力の力」を用いて管理しており、一方でロシアは中央銀行も含めた諸権力は大統領の下で統率されており諸権力の独立性は事実上存在しない事


以上で、現在の西側とロシアの民主政治の違いを考察してみた。


西側の自由民主制に住む市民が目指すべき社会は、

現在の西側の「操作される民主主義」でもなく

プーチン・ロシアの「統制される民主主義」でもない。


世界人権宣言や日本国憲法の「目的」として掲げられている

「個人の尊厳の実現(万人の人格が保障された上で、適切な幸福追求の最大化が実現した、支配者の存在しない平和な社会)」

を追求していく社会こそ、市民が目指すべき「真の民主主義」の在り方だ。


それを実現させる制度の一つが、国民が直接的に法律を作ることを可能にする直接民主制の導入である。

以下のリンク先を参考。


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