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黒田日銀総裁を承認 大規模な量的緩和がインフレより先に資産バブルを引き起こしやすい理由

2013/03/16 01:35 投稿

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15日の午前に国会で、次期日銀総裁に黒田東彦アジア開発銀行総裁、副総裁に岩田規久男学習院大学教授、中曽宏日銀理事の起用が承認された。


今回の日銀人事の最大の注目点は、日銀外部から任命された黒田日銀総裁と、岩田副総裁の二人が、以前の日銀幹部達とは比べ物にならないくらいの強力な量的緩和論者であるということだ。

量的緩和とは、日銀が市場から国債などの資産を買取り、変わりにお金を渡してあげること。
そうすることで、お金を受け取った銀行等の金融機関から市場にお金が流れていき、企業の投資や個人の消費が増加することを狙った政策である。

ここで、問題になるのがどのようにして投資や消費が増加するのかということだ。
日銀は今まで、量的緩和を大規模に行ってきた。しかし消費は増加しなかった。

銀行は受け取ったお金を国債の購入にまわしたが、その分、貸し出しを減らしたので、市場の購買力は増加しなかったためだ。

黒田日銀総裁と岩田副総裁は日銀の量的緩和の規模が小さすぎたためにデフレを克服できなかったと考えている。そのためより大規模な量的緩和政策を行っていくと。

確かに、日銀が国債を無制限に購入していけば必ず、デフレは克服できるだろう。
何故なら、国債をいくら購入してもインフレにならないのであれば、市場に販売されている全ての国債を購入してしまえばいい。そうすると、日本の借金は全て日銀が購入したことになり、日本の財政赤字の残高は事実上ゼロになる。

借金をゼロにしてもインフレにならないなら、是非そうするべきだろう。

しかしそれが出来ないのは強力な副作用があるためである。
700兆円の国債を購入してしまうということは、銀行に700兆円のお金が渡されることになる。700兆円のお金を銀行が、様々な資産の購入に使えば、バブルが発生し、不動産や株価、公社債などの資産価値はたちどころに暴騰してしまうだろう。

しかもそのお金が、消費にまわってくることは時間の問題であるから、ハイパーインフレを作り出してしまう。
この事実から量的緩和によってインフレを作り出すことは出来ないというのは、全くのでたらめであることが分かる。インフレにならないなら永遠の無借金経営が出来るからだ。
しかし、無尽蔵の量的緩和はバブルと高インフレを作る可能性がある。

量的緩和は物価を上昇させる効果はあるが、バランスが重要であるということだ。

ちなみに量的緩和が大規模になれば、インフレよりも先に資産価格の高騰、つまりバブルが起きる可能性が高い。

従来の日銀当座預金を通じた量的緩和が問題なのは、実体経済の消費を伸ばす直接的な方法が殆どないことである。
何故なら、中央銀行は直接、私たちが消費を行う一般市場にお金を流すのではなく、市中銀行を通じてお金の増減を操作しているからだ。
そうすると、いくら量的緩和をしても、そのお金を受け取った銀行がどのようにお金を使うかで景気への影響は左右される。
銀行が市場にお金を供給する方法は主に二つある。1つは貸し出しで、もう1つは株や不動産、公社債などの金融資産の購入である。

・金融関連業種以外の一般市場への貸し出しは消費を増加させる
・金融資産の購入は、資産価格を上昇させる

量的緩和で銀行が受け取るお金は、貸し出しではなく金融資産の購入に向かう。
その理由は、銀行の独特な会計上の性質が引き起こす現象であり、詳しい内容については後日お伝えする。
ここで重要なのは、銀行が量的緩和でえた資金は貸出しに回らず、そのため消費を直接は増やさない。金融資産の購入に向かい、資産価格を上昇させるという性質がある。

そうなると、従来の量的緩和の方式で大規模に通貨を創造すれば以下の流れが予想される。

大規模な量的緩和→銀行が大規模な資金をえる→銀行の金融商品の大規模な購入→金融商品の価格が上昇→実体経済と解離した資産価格(バブル化)→金融資産に向かったお金が、消費に流れてくる→消費の増加→物価の上昇(インフレ)→好景気→バブル崩壊
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この流れでは、インフレが起こる前に、金融経済にお金が流れていき、そこでバブルを作り出す。実体経済と解離した金融資産の上昇はバブルを作り出し、そして崩壊させる。

日銀を遥かに超える規模で大規模な量的緩和を行っているアメリカのFRBの金融政策も似たような状況を作り出している。過去最高を更新するニューヨークの株式市場の原資は、量的緩和でえた資金をもとに株などが購入されているためだ。

日本も大規模な量的緩和のみをおこなうなら、上記のような流れが作り出されるだろう。
そうならないようにするには、実体経済へお金が流れるように、政府か日銀が工夫することである。

今後の、黒田総裁の金融政策に注目である。

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2012年11月12日出版!
<リンク>頂いた書評一覧

【成甲書房からの内容紹介の転載】

 

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